IoTアナリスト企業Berg Insightの新たな市場調査報告書によると、世界中で利用可能なマイクロモビリティ車両数は、2024年の2,760万台から2029年までに3,780万台に達する見込みである。マイクロモビリティサービスとは、自転車、スクーター、その他類似の軽車両を短期レンタルする共有型モビリティサービスを指す。マイクロモビリティ市場は過去数年間、M&Aの活発化と複数サービスの終了が特徴的だった。Berg InsightのIoTアナリスト、エリカ・リカード氏は「市場は統合を続ける一方、より成熟した段階に達している」と指摘する。
複数のマイクロモビリティ事業者が相互に提携し、他プレイヤーとも連携してサービス範囲と提供内容を拡大している。マイクロモビリティ事業者の多くが、マルチモーダルな車両群を提供するため、追加の車種を導入している。「単一の車種に注力するよりも、自転車、スタンドアップ式スクーター、シットダウン式スクーター、自動車を組み合わせたサービスを提供する事業者が増えている」とリカード氏は説明する。自転車シェアリングは分散型の自転車レンタルサービスであり、通常は短期レンタルに焦点を当てている。従来、ほとんどの自転車シェアリング事業者はステーションベースの運営モデルを採用してきた。この運営モデルでは、会員は都市内の指定ステーションで車両の受け取りと返却を行う必要がある。北米ではステーションベース型が最も普及している。一方で、指定エリア内でドックレス車両を自由に利用・返却できるフリーフローティング型も人気を集めている。欧州では現在、ステーションベース型を上回る数のフリーフローティング自転車が稼働している。2024年末時点で世界のシェアサイクル総台数は推定2,570万台に達し、その大半は中国におけるフリーフローティング型である。主要なシェアサイクル事業者には、HelloBike、Didi Qingju、Meituan Bike、Nextbike、Hello Cycling、Docomo Cycle、Anywheel、Lime、Bolt、Dott、JCDecaux、RideMovi、Donkey Republicなどが挙げられる。
立ち乗りスクーターシェアリング市場は2017年の登場以来急速に成長している。2024年末時点で、シェアリング用立ち乗りスクーターの台数は推定180万台に達した。主要な立ち乗りスクーター事業者には、欧州ではDott、Bolt、Voi、Lime、北米ではThird Lane Mobility(BirdおよびSpin)とLimeが挙げられる。その他の市場における主要事業者の例としては、ウーシュ、スウィング・モビリティ、ビーム・モビリティ、ビンビンなどが挙げられる。電動キックボードを取り巻く規制環境は複雑で、地域、国、州、都市によって異なる。現在、多くの都市では事業者ライセンスの義務化を通じて路上に許可されるキックボードの台数を制限している。都市は、市内での事業者数を制限できるだけでなく、各事業者が展開できる車両数も制限できる。一方、着座型スクーターシェアリング市場は同程度の規制を受けていない。2024年末時点で、世界のシェアリングモビリティスキームにおける着座型スクーターの共有台数は推定14万7000台に達した。主要な着座型スクーターシェアリング事業者には、欧州のCooltraとCheck、インドのYulu、トルコのMarti Technologies、台湾のWeMoとGoShareなどが挙げられる。
テレマティクスは、共有マイクロモビリティサービスの開始当初から重要な要素である。複数の自転車シェアリング技術ベンダーが、テレマティクスハードウェア、ユーザー認証、自転車ロック、ステーションインフラ、ユーザーアプリケーション、フリート管理プラットフォームを含む包括的ソリューションを提供している。エンドツーエンドの自転車シェアリング技術を専門とする企業には、Lyft Urban SolutionsやNextbikeがある。マイクロモビリティ向けテレマティクスソリューションの代表例としては、Omni Intelligent Technology、Jimi IoT、Connected Cycle、Queclink、Teltonika Telematicsなどが挙げられる。現在、車両メーカーは共有スクーターや自転車に工場出荷時標準装備としてテレマティクスシステムを搭載している。複数のマイクロモビリティ事業者も社内でIoTソリューションを設計・開発している。マイクロモビリティソフトウェアプロバイダーにはAtom Mobility、MOQO、Wunder Mobility、CT Mobilityなどが挙げられる。
共有モビリティソフトウェアプラットフォームは、車載機器管理、フリート管理、予約管理、課金処理からダッシュボードやデータ分析による運用監視まで、マイクロモビリティ事業の全業務活動を支援する統合システムを構成する。QucitやUrban Sharingは共有マイクロモビリティシステム向け最適化ソフトウェアプロバイダーの例である。「フリートの再配置、バッテリー交換、車両メンテナンスといった業務タスクの自動化と調整は、マイクロモビリティ事業者が収益性と業務効率に注力する上で極めて重要です。複数の事業者がAI搭載最適化ソフトウェアを導入し、車両稼働率の向上とコスト削減を実現しています」とリカード氏は結論づけた。
情報源:Berg Insight社
お問合せ:Berg Insightに関するお問合せはデータリソースでご連絡下さい。