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市場規模で見るパワー半導体の内訳と今後の展開

市場規模で見るパワー半導体の内訳と今後の展開

 

前回は、パワー半導体の機能や製品における位置づけ、種類について議論しました。今回は、市場規模という観点からパワー半導体を対話形式で議論していきます。

前回からの再掲になりますが、2019年現在で半導体市場は54兆円規模になっており、パワー半導体市場は1兆円程度です。この1兆円市場の内訳を、今回は議論していきます。

出典:経産省

 

 

 

それでは、ここからQ&Aディスカッションを始めましょう。

質問1) まずは、ベンダーランキングを教えていただけますか?  パワー半導体市場では、日本企業も強いという事ですが

 

回答1) 以下にOmidaは発表したランキングを示します (2019年~2021年)。

出典:Omdia

 

2021年で見ると、そのランキングは

Infinion(独) > Onsemi(米) > STMicroelectorinics(スイス) > 三菱電機 > 富士電機 > 東芝 >
Vishay Intertechnology(米) > Nexperia(中) > ルネサスエレクトロニクス > ロームセミコンダクター

となっています。

注) Nexperiaは、2017年にNXP Semicondutorからスピンオフしたパワー半導体メーカ。2018年10月に中国企業のWingtechTechnologyが株式の75%超を取得し、その子会社となりました。

トップ3は取れていませんが、トップ10に5社が入っていますので、日本メーカは強いと、言う事はできます。

ただ、日本メーカはいずれもトップのInfinionの1/3以下です。トップのInfinionは2位のonsemiの2倍以上と圧倒的に強いという事を差し引いても、各社、まだまだやる事が山積みのように思えます。

又、2021年で見た時、トップ10の売上合計は$15226Mであるのに対し、日本メーカ合計は$4924Mと1/3以下で、これでInfinionと並ぶ程度です。メーカ数では着目できる点もあるが、各社は、まだまだ、やる事が多そうです。

 

 

質問2) なるほど。トップ10のうちの5社は日本企業というと「おおっ」と思いますが、「目指せ、トップ」を考えると、各社は、まだまだやる事はありそうですね。

ところで、パワー半導体はSi系・SiC系・GaN系の三つに分類されるという事ですが、この三つの市場規模はどの程度になりますか?

特に、SiC系やGaN系は、次世代パワー半導体として注目されていますが、その市場規模はどの程度なのですか?

 

回答2) 面白い事を聞いてきますね。以下に富士経済が発表したパワー半導体市場の予測を示します。

2022年現在でパワー半導体市場規模は2.3兆円で、うちSi系が2.2兆円、SIC系が1200億円、GaN系が39億円、Ga2O3系が3億円、となっています。

年度が違うとはいえ、Omdiaの見積りとは市場規模はかなり異なる事が気になりますが、Si系~SiC系~GaN系の比率を定量化するという目的からすると、Si系が圧倒的な比率を占めていることがわかります(95%)。 次がSiC系ですが、規模はSi系の1/20強、GaN系はSiC系の1/500以下ですから。

登場が最近であるとはいえ、これらが「次世代パワー半導体」と総称されるのも、こういった所にも起因すると思われます。

そして、富士経済は、2030年にはSi系が80%になり、SiC系はSi系の1/4弱、GaN系はSi系の1/150強になると予想されています。SiC系はプレゼンスが出てきますが、GaN系はプレゼンスを得るにはまだまだ時間が要りそうです。

興味深いのは、Ga2O3がGaNを凌駕すると富士経済が予測している事です。この事は、引き続き、見ていくことが必要です。

ただ、SiC系やGaN系には「WBG (Wide Band Gap)パワー半導体」という総称もあります。この観点から見ると、SiC系やGaN系のパワー半導体は別の様相を表す事ができますが、これは技術的な話でもありますので、次回に行いたいと思います。

 

 

質問3) WBG半導体ですか。 面白そうですね。次回を楽しみにします。最後、2030年にはパワー半導体の20%弱になるSiC系パワー半導体の実情について、もう少し話を聞かせていただけますか?

回答3) Yole社が発表したSiCパワー半導体のランキングをお見せします。これによると、ランキングは、STMicroelectronics > Infinion > WolfSpeed >ローム > onsemi > 三菱電機 となっています。

ここでも日本メーカが二社入っていますが、欧米に先を越された状況です。

出典: YOLE

 

SiC系は次世代パワー半導体ですから、まだまだ逆転の余地はあります。日本でも、ロームや富士電機がSiC系パワー半導体工場の投資を進めています。

日本の各社には、短期的な浮沈にとらわれる事なく、10年の計をもって設備投資を続けていって欲しいですね。

エコノミストオンライン (2022/6/20)

 

筆者:株式会社データリソース客員研究員 鈴木浩之 (ICTラボラトリー代表)

 

データリソース社が進める半導体市場レポート

 

 

 

 

 

 

 

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