今、SDNが注目される理由
サーバ・ストレージでは90年代より仮想化・On-Demand化の技術開発は進められてきた。2002年にAmazonがAWSによりIaaSを商用化し、その後、Googleその他のネット企業がXaaSを続々と商用化し、サービス・データセンタ内の仮想化・On-Demand化が急速に進行した。しかし、ネットワークの仮想化・On-Demand化は遅れており、サービス革新の妨げになっていた。
ネットワークの仮想化・On-Demand化のコンセプトとしてSDN (Software Defined Networking) が考えだされ、OpenFlow技術が開発された。
ここで、その歴史を年代記にてふりかえってみたい。
時期
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出来事
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1999年3月
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Salesforce.comが設立
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2002年7月
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AmazonがAmazon Web Service (AWS)をリリース
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2004年
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Facebookがサービス開始 (当初は学生のみ)
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2008年4月
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Google がGoogle App Engineのサービス開始
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2009年12月
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OpenFlowスイッチコンソーシアムがOpenFlow v1.0.0を発表
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2010年1月
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MicrosoftがWindows Azureのサービス開始
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2011年5月
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ONF発足 [i] 目的はOpenFlowのSouthbound APIの標準化
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2011年6月
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NECがOpenFlow Controller/Switchを世界最初に商品化
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2011年10月
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スタンフォード大学が第一回Open Networking Summitを開催
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2012年1月
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GoogleがDC間ネットワークのSDN/Open Flow制御への移行を完了
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2012年4月
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スタンフォード大学が第2回Open Networking Summitを開催
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2012年6月
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ONFがOpenFlow v1.3.0を発表
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2013年1月
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2013年4月
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Open Daylight [iii]発足。目的はOpenFlowのNorthbound APIの標準化
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2013年12月
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OpenDaylightが最初のOpen Source Code(hydrogen) を発表 (予定)
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SDNの現状
最新仕様は2012年6月に発表されたOpenFlow v1.3となるが、現在、製品化されている機器の大半はOpenFlow v.1.0準拠にとどまっている。
Open Daylightが標準化を進めているNorthbound APIの発表が2013年12月であることを考えると、SDN製品リリースが本格化するのは2014年初頭と思われる。
市場規模予測
以下、SDN市場規模予測を示す。

(出典 SDN Central発行 SDN Market Sizing Report)
ネットワーク投資総額は2012年から2018年にかけて$70B強から$90$程度に拡大していくが、SDN向け出費は2012年のほぼゼロから$35B、全体比39%に拡大していくことを見て取ることができる。
これをもう少し、細かくみると、以下の事が言えてくる。
- 2018年におけるSDN市場の2018年時点にて、SDN化の対象となるネットワークセグメントが40%、対象とならないネットワークセグメントが60%になる。
- SDN化されるネットワークセグメントにて、各プレイヤの比重を見ると、通信事業者が30%強、クラウド事業者が20%強、企業網が40%強となる。
- 通信市場は、通信事業者が圧倒的にリードする市場ではなくなりつつある。
- ONFという形でRackspace等のデータセンタ事業者やGoogle/Facebook等のOTTが通信市場をリードしようとし、Open Daylightという形でサーバベンダーが通信市場をリードしようとしている。
いよいよ、次世代の市場勢力図が見えつつあるようである。 今後が楽しみである。
最後に
歴史的に考えると、今の状況は、NECがC&Cを標榜した時に考えた時代、富士通がコンピュータ事業に舵を切る時に詠った「瀬を早み 岩にせかるる 滝川の われても末に 逢はむとぞ思ふ」に込めた時代の到来でもある。
日本企業は、時代がこのようになることをどこかで予感していたのであろうか?
アメリカネット企業が圧倒的な今、このような時代を予感していた、NTT・NEC・富士通をはじめとする日系企業各社のDNAにも期待したい。
次回は、通信事業者が考えるSDN、即ち、Network Function Virtualization (NFV)について考察を加えたい。
データリソース社が推薦するSDN関連 市場調査報告書
[i]; Open Networking Foundationの略
Cisco, Citrix, Ericsson, Facebook, 富士通, Google, 日立、華為, IBM, Intel, KDDI,
Microsoft, NEC, Nokia Siemens Networks, NTTコミュニケーション, Oracle, Rackspace, Samsung, Verizon, VMware等、100社以上がメンバーになっている
[ii]; Network Function Virtualization Industry Specification Groupの略
欧州、アジア、米州の主要キャリア及びキャリア系ベンダーがメンバーなり発足。
[iii]; Linux Foundationが設立したOpen Source Project
Cisco、Citrix、Ericsson、富士通、HP、IBM、Intel、Juniper、Microsoft、NEC、Nuage Networks、Redhat、VMWare等の18社にて発足