音声認識はスマートホーム市場は離陸させるか?
1. 序
2014年6月にAppleがHomekitを、同じく7月にはAmazonがAlexaを、GoogleがNestを発表した。 以来、これらのフレームワークに準拠した家電機器が、着実に増えてきている。
2016年12月にはAmazonがDash Buttonの日本での発売を開始した。
スマートホームは、今までにも何回か注目された事はあったのだが、一般に広まる所には至っていない。
スマートホームは、今回は離陸するかであろうか? 今回は、ここに洞察を加える。
2. スマートホームに期待されていること
現在、スマートホームに期待されている機能には以下の4つがある
– HEMS (図1-1参照)
– ホームオートメーション (図1-2参照)
– ホームセキュリティ (図1-3参照)
– ホームヘルスケア (図1-4参照)
![]() 図1-1- HEMS |
![]() 図1-2- ホームオートメーション |
![]() 図1-3- ホームセキュリティ |
![]() 図1-4- ホームヘルスケア |
日本ではHEMSやホームヘルスケアが重要視され、北米ではホームオートメーションやホームセキュルティが重要視されるといった形で、スマートホーム市場を牽引する可能性がある機能は国・地域により異なる。
但し、環境問題・エネルギーは全地球的な課題であり、HEMSは、今後、欧米でも注目は高まってくると思われる。 又、日本でも、今後は、ホームオートメーションやホームセキュリティは注目が高まっていくるであろう。
今は、マーケットドライバは国・地域により異なるが、今後は、いずれもが有力なファクタになる。 又、中国・東南アジアでもスマートホームへの関心が高まるが、これらが市場を牽引していくことになる。
3. スマートホーム技術の変遷
まず、表Aにてスマートホームの推進者の変遷を、表Bにて各技術の特徴を示す。
表A スマートホーム技術推進者の変遷
時期 | 出来事 |
2000年頃 | スマートホームの規格として、日本はEchonetを、欧州はKNXを推進。2008年頃、米国はSEPを発表 |
2010年頃 | 家電メーカが自社製品を対象としたスマートホーム製品を提供。(パナソニック、Phillips等々 |
2015年頃 | Apple, Google, Amazon等のITベンダがスマフォアプリを中核にしたエコシステムを提供開始 |
表B (1/3) スマートホーム技術 – 業界団体主導の技術開発
表BA (3/3) スマートホーム技術 – ICTベンダ主導の技術開発
とはいえ、Echonetは今も活動しており認定機器は確実に増加している。KNXも活動を続けており、今や公認協会は日本を含む43ヵ国になり、認定デバイスが7000を超えている。
今後、これらの競合がどのようになるのか、興味深い
4. 次なる争点
技術的には、次なる焦点の有力候補は、音声操作とプログラミングになると思われる。
Apple HomeやGoogle Nestにおける操作は、スマートフォン画面での手入力である。しかし、今後は、Amazon Alexaに代表される音声操作が中心になってくる。
既に、2017年CESにおいても音声ボットは焦点の一つになっていたが、今後、AppleはSiriを、GoogleはGoogleNowを家電の操作に活用することを推進するであろう。
プログラミングとは、一つのコマンド・条件設定で複数の操作を自動的に実行することである。
例えば、Siriに「19時に家に着く」と13時に音声で入力するとする。すると、Siriは、19時には部屋の温度が快適になり、照明が点灯され、風呂が沸いている状態に屋内を調整する。
かつては、夫が退社時に家にワン切りコールをすると、それを合図に奥さんが家でフロを沸かし夕食を用意したものであるが、それが自動化されることになる。
5. 終わりに
Amazonによると、2016年に最も売れた製品はAmazonのEcho (Alexa搭載機器)であった。1月10日付け日経朝刊「The Echonomist」によると、AmazonのEchoの世帯普及率がクリスマス商戦前においても4%とのことである。
スマートホーム市場が注目されたことは、過去に何回かあったが、いずれも一過性に終わった。原因としては、スマート家電は使いにくい、価格が高い、便利さを実感できない、手でやった方が早い等々、色々な理由があった。ITリテラシの無さが前提となる一般家庭向けでは、スマートホームの定着は困難であった。
今や家電の操作はスマートフォン画面で、今後は音声での操作が可能となり、ITリテラシの低い人にとっても使いやすくなり、今までとは様相が大きく異なっている。
スマートホームが一般家庭にするかどうか、注意深く見ていきたい。
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筆者:株式会社データリソース客員研究員 鈴木浩之 (ICTラボラトリー代表)