認知症ケア(介護サービス)と
ケアテック市場調査
認知症の経済負担は、医療だけでなく介護サービス、家族によるインフォーマルケア、そして現場の生産性を支えるケアテックまで含めて捉える必要があります。本ページでは、認知症を取り巻く介護・ケア・テクノロジーの市場構造を整理し、主要プレイヤー、政策、成長領域を俯瞰します。
(2024年度実績)
(2030年推計)
(2030年度予測)
インフォーマルケアの比重
認知症の市場を見るうえでは、医療費だけでなく介護、家族負担、見守りや業務支援を担うケアテックまで視野に入れることが重要です。厚生労働省によれば、日本の介護予防サービス+介護サービス費用額累計は2024年度に11兆9,381億円に達しています。
介護保険サービス市場
認知症ケアの土台となるのは、在宅、通所、施設などを含む介護サービス市場です。日本では給付費の増加が続き、需要は高齢化を背景に構造的に拡大しています。
厚生労働省の将来見通しでは、中長期で介護費のさらなる増大が示されており、持続可能性と生産性向上が同時に問われています。
インフォーマルケアの経済負担
世界の認知症コストでは、家族などによるインフォーマルケアが大きな比重を占めます。市場を公的給付だけで見ると、実態を過小評価しやすいのが特徴です。
WHOや日本の経済負担研究は、家族の時間損失や就労制約まで含めた評価の必要性を示しています。
見守り・記録・業務支援のケアテック
ケアテックは、見守り機器、介護記録、業務支援、認知機能セルフチェックなどを含む広い領域です。人材不足の深刻化により、現場導入の合理性は年々高まっています。
矢野経済研究所は、認知症関連の製品・サービス市場が2024年度55億円から2030年度270億円へ拡大すると予測しています。
SaMD・DTxと認知症周辺市場
今後の成長領域としては、診断支援SaMDやDTxも注目されています。もっとも、償還、エビデンス、現場定着が進まなければ、成長率は2030年以降に鈍化する可能性があります。
そのため、投資や事業計画では、導入初期の高成長と成熟期の減速を分けてシナリオ化する見方が実務的です。
認知症ケア市場は、巨大でありながら分散的です。上位事業者が存在しても、介護保険サービス費用全体を分母にするとシェアは数%未満にとどまりやすく、現場運営力と多拠点展開が競争力の核になります。
厚労省 ─ 介護費の将来見通し
2018年時点の政府推計では2030年度19.9兆円、2035年度23.9兆円の見通しが示されています。直近実績との差はありますが、政策議論の参照軸になります。
Journal of Alzheimer’s Disease ─ 日本の経済負担推計
日本でも、公的介護費だけでなく生産性損失や家族介護負担を含めた経済評価の重要性が示され、ケア市場の広がりが明確になります。
家族負担と現場の生産性が、市場の本質を決める
認知症ケア市場の特徴は、医療のように単純な診療報酬市場ではなく、介護サービス、自治体支援、家族の時間投入、就労継続支援が重なっている点です。費用だけではなく、支える人の負担まで含めて初めて全体像が見えてきます。
一方、介護現場は強い人材制約に直面しており、見守り、記録効率化、コミュニケーション支援などのケアテック導入が、単なるDXではなく供給維持の前提条件になりつつあります。
OECDも、予防・早期診断・非薬物介入・介護者支援を含む包括政策の重要性を整理しています。
日本の介護市場は分散型です。以下は、介護保険サービス費用約12兆円を分母に、主要事業者の公表売上高を分子として試算したラフな比較です。厳密な給付費シェアではなく、事業規模感を見るための参考値です。
| 企業 | 主な領域 | 最新売上高(公表値) | 市場シェア推定 | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| SOMPOホールディングス | 施設・在宅・周辺サービス | 2024年度 1,813億円 | 約1.5% | 大手の一角だが、市場全体から見ると依然として一桁前半。多拠点運営とブランド力が強み。 |
| ベネッセスタイルケア | 施設介護中心 | 2024年度 1,434億円 | 約1.2% | 高齢者ホーム運営の存在感が大きく、比較的高付加価値なサービス設計が特徴。 |
| ツクイ | デイサービス・在宅系 | 2025年3月期 約954.6億円 | 約0.8% | 通所・在宅に強み。地域密着型の運営基盤が市場で重要なポジションを持ちます。 |
認知症のケアと介護を理解するうえで、制度統計、国際機関、民間市場調査を組み合わせて見ることが重要です。
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厚生労働省 ─ 介護給付費等実態統計 日本の介護サービス市場規模を把握する基礎資料。2024年度の費用額累計や前年比が示され、足元の拡大トレンドを確認できます。
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厚生労働省 ─ 介護費の将来見通し 2018年度を起点とした将来推計。直近実績との乖離に注意は必要ですが、政策前提での介護市場の長期像を把握できます。
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WHO ─ Dementia Fact Sheet / Global Dementia Challenge 世界の認知症コスト、介護者負担、各国対応の遅れを整理した基本資料。グローバル視点での市場理解に有効です。
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矢野経済研究所 ─ 認知症関連製品・サービス市場 ケアテック側の成長を把握するうえで重要な資料。セルフチェック、SaMD、DTxなどの立ち上がり時期を整理できます。
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OECD ─ Policies for people with dementia across OECD countries 予防、早期診断、非薬物介入、介護者支援を含む政策比較。制度変更が市場構造に与える影響を読む際の参照先です。
認知症ケア・ケアテック市場調査 関連リソース
厚生労働省 ─ 令和6年度 介護給付費等実態統計
日本の介護市場の最新費用実績を確認できる一次資料です。
厚生労働省 ─ 介護費の将来見通し
2030年、2035年、2040年を見据えた介護費の中長期シナリオを整理しています。
厚生労働省 ─ 認知症施策推進基本計画
認知症ケアをめぐる日本の制度的な方向性を把握するのに有用です。
WHO ─ Dementia Fact Sheet
世界の患者数、社会的負担、政策課題を簡潔に把握できる基礎資料です。
Grand View Research ─ Long Term Care Market
グローバルの長期介護市場推計を確認でき、国際比較の土台になります。
矢野経済研究所 ─ 認知症関連製品・サービス市場
ケアテックや周辺ソリューション市場の伸びを把握するための国内調査です。
