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老人介護・障害者支援市場

訪問介護市場
市場調査レポート

訪問介護市場は、介護保険制度のなかでも在宅継続ニーズを直接受けるコア市場です。 2020年度の9,358億円から2024年度の1兆2,142億円へ拡大し、 高齢者人口の増加、75歳以上人口の増加、在宅での生活継続志向を背景に、今後も堅調な需要が見込まれます。 一方で、ヘルパー不足、移動効率、小規模事業所の収益性、報酬改定への対応が成長の制約要因になります。

1.21兆円
2024年度 訪問介護市場規模
6.7%
2020〜2024年度 CAGR
14.14倍
ヘルパー有効求人倍率
54.4歳
訪問介護ヘルパー平均年齢
Executive Summary

訪問介護市場は、在宅介護の継続ニーズを直接受ける市場であり、介護保険サービスのなかでも高齢化の影響を受けやすい領域です。 厚生労働省の介護給付費等実態統計ベースでは、費用額累計が2020年度の9,358億円から2024年度の1兆2,142億円へ拡大しました。 需要側では75歳以上人口の増加、単身高齢者・老老介護・退院後在宅復帰ニーズが市場を押し上げています。 供給側では、ヘルパーの高齢化、人材不足、移動時間の非効率、小規模事業所の経営余力不足が最大の課題です。

需要は在宅継続ニーズで拡大

訪問介護は、利用者宅で身体介護・生活援助・通院等乗降介助を提供するサービスです。 施設ではなく自宅で暮らし続けたい高齢者ニーズと連動し、75歳以上人口の増加が市場成長を支えています。

収益は報酬・加算・稼働率で決まる

訪問介護の収益は、出来高型の介護報酬、各種加算、利用者自己負担で構成されます。 1訪問あたり単価だけでなく、ヘルパー稼働率、移動時間、加算取得率、キャンセル率が損益を大きく左右します。

最大制約は人材供給

ヘルパーの有効求人倍率は高く、平均年齢も上昇しています。 需要は増えても供給キャパシティが伸びなければ、事業者にとっては売上機会損失が拡大します。

トピック定義

本ページにおける「訪問介護市場」は、介護保険の居宅サービスにおける訪問介護を指します。 ホームヘルパーが利用者宅を訪問し、身体介護、生活援助、通院等乗降介助を提供する領域です。 訪問看護、訪問リハビリテーション、保険外の家事代行は原則として含めません。 市場規模は、介護給付費等実態統計の費用額累計を採用します。

市場規模の考え方

市場規模は、厚生労働省「介護給付費等実態統計の概況」に掲載される訪問介護の費用額累計を採用します。 費用額は、保険給付額、公費負担額、利用者負担額の合計であり、市区町村が直接支払う償還払いは含まれません。

年次比較可能性が高く、介護保険市場の実勢を安定的に追えるため、訪問介護市場の規模把握に適した指標です。

市場規模の推移

2020〜2024年度の訪問介護市場は、パンデミック後も縮小せず、2021年度に大きく伸びた後も年4〜5%台の拡大が続きました。 在宅継続ニーズの定着と、75歳以上人口の増加が主な成長要因です。

年度 市場規模 前年比 読み取りポイント
2020年度 9,358億円 訪問介護市場の基準年。介護保険内の在宅サービスとして安定需要を形成。
2021年度 1兆562億円 +12.9% 在宅継続ニーズの高まりを背景に大きく拡大。
2022年度 1兆1,014億円 +4.3% 高成長後もプラス成長を維持。
2023年度 1兆1,548億円 +4.9% 年4〜5%台の巡航成長に移行。
2024年度 1兆2,142億円 +5.1% 1.2兆円を超え、在宅介護の中核市場として拡大。

訪問介護市場規模の推移|費用額累計ベース

2020年度
9,358億円
2021年度
1兆562億円
2022年度
1兆1,014億円
2023年度
1兆1,548億円
2024年度
1兆2,142億円

※2024年度の1兆2,142億円を100%として相対表示。市場規模は厚生労働省「介護給付費等実態統計の概況」の訪問介護費用額累計ベース。

主要プレイヤーとサービス比較

全国展開、複合サービス、教育基盤の観点からみると、代表的な民間プレイヤーは ツクイ、ニチイ学館、SOMPOケア、セントケア・ホールディング、ケア21です。 訪問介護単体ではなく、居宅介護支援、デイサービス、施設介護、障がい支援などと組み合わせることで、採用・送客・クロスセルの面でスケールメリットを持っています。

事業者 主力領域 サービス特徴 事業上の示唆 公式情報
ツクイ 在宅〜施設 自宅で受けるサービス、デイサービス、老人ホームを一体展開。 在宅起点で多サービス転換がしやすい。 ツクイ 介護サービス
ニチイ学館 全国総合介護 全国47都道府県・約1,900拠点で訪問介護、通所介護、居住系まで提供。 採用・教育・標準化で優位。 ニチイ学館 介護サービス
SOMPOケア 在宅・施設複合 訪問介護と通所介護を併せ持ち、在宅サービス間の連携が強い。 高齢者住宅・施設との回遊性が高い。 SOMPOケア 訪問介護
セントケア・ホールディング 在宅訪問系 訪問介護、訪問入浴、訪問看護、定期巡回、デイサービス等を広く提供。 医療・看護連携を組み込んだ訪問型モデルに適合。 セントケア・ホールディング
ケア21 訪問介護中心の総合福祉 訪問介護、デイサービス、障がい支援まで展開。 介護と障がい支援の横断運営が可能。 ケア21 訪問介護
需要動向と顧客セグメント

訪問介護需要の大前提は高齢化です。2024年時点で75歳以上人口は2,078万人、総人口比16.8%となり、65〜74歳人口を上回りました。 訪問介護はこの75歳以上層、とくに単身高齢者、老老介護、退院後の在宅復帰層の増加と強く連動します。

軽度者の生活支援型

要介護1では生活援助中心が多く、掃除、洗濯、調理、買い物などの生活維持支援が中心になります。 サービス品質に加えて、訪問密度と移動効率の設計が重要です。

中重度者の身体介護型

要介護5では身体介護中心の比率が高く、排泄、入浴、食事、移乗など専門性の高い支援が中心になります。 採用要件、教育体制、加算取得、緊急対応力が収益性と継続率を左右します。

医療・看取り周辺の多職種連携型

訪問看護、居宅介護支援、福祉用具、医療機関との連携が重要なセグメントです。 中重度化・在宅看取りニーズの増加により、単独サービスよりも多職種連携型の価値が高まります。

収益モデルと価格帯

訪問介護の収益は、介護報酬、各種加算、利用者自己負担で構成されます。 2024年度の算定構造では、身体介護、生活援助、通院等乗降介助に対して時間区分ごとに単位が設定され、 特定事業所加算、緊急時訪問介護加算、処遇改善加算などが上乗せされます。 利用者側の自己負担は原則1〜3割です。

利用者 原則1〜3割負担。身体介護・生活援助などを利用。
ケアマネジャー ケアプランを作成し、訪問介護事業所と連携。
訪問介護事業所 ヘルパー派遣、記録、請求、加算管理を実施。
国保連請求 保険給付分を請求。加算取得が収益差を生む。
区分 2024年度の主な単位例 収益上のポイント
身体介護 20分未満163単位、20分以上30分未満244単位、30分以上1時間未満387単位、1時間以上567単位。 中重度者対応では単価が上がる一方、専門人材・教育・急変対応が必要。
生活援助 20分以上45分未満179単位、45分以上220単位。 軽度者中心。移動効率と訪問密度が利益率に直結。
各種加算 特定事業所加算、緊急時訪問介護加算、処遇改善加算など。 加算取得率が損益差を生む。加算管理の専門体制が重要。
規制・制度・補助金の影響

2024年度改定では、訪問介護の基本報酬見直しと処遇改善体系の再編が大きな論点になりました。 訪問介護の収支差率が介護サービス全体平均より高かったことなどが説明されましたが、 全国平均での議論であるため、小規模事業所、過疎地、広域エリア、移動負担の大きい事業所には逆風となります。

技術・イノベーション動向

訪問介護で効果が出やすい技術投資は、単体のDXではなく、採用、教育、シフト、移動、記録、請求、加算管理をつなぐ運用改善です。 厚生労働省は2024年6月に「介護テクノロジー利用の重点分野」を9分野16項目へ拡充しており、 訪問介護ではモバイル記録、勤怠・シフト最適化、ルート最適化、情報連携、見守り系データ連携が実務上の焦点になります。

モバイル記録・音声入力

訪問前後の記録をスマートフォンで完結させ、記録漏れや事務負担を削減します。 音声入力、写真連携、チャット連携は新人ヘルパーの定着にも効果があります。

シフト・ルート最適化

訪問介護の利益率は移動時間に大きく左右されます。 商圏内で短距離訪問を高密度化し、徒歩・自転車・短距離移動で回せる設計が重要です。

教育・加算管理の標準化

モバイルマニュアル、同行支援、請求チェック、加算取得条件の管理を一体化することで、 サービス品質と収益性を同時に改善できます。

将来予測とリスク要因

2020〜2024年度の実績CAGRは6.7%ですが、将来予測では高齢化要因は強い一方で、報酬抑制と人材制約が増すため、 2025〜2029年度の年平均成長率を4.5%と置く保守モデルが妥当です。 この場合、2029年度の訪問介護市場は約1兆5,131億円となります。

シナリオ 2025〜2029年度 CAGR前提 2029年度市場規模 前提条件
弱気ケース 年2.5% 約1兆3,744億円 人材不足、報酬抑制、広域移動負担により供給キャパが伸びにくい。
ベースライン 年4.5% 約1兆5,131億円 高齢化と在宅継続需要は強いが、供給制約により過去CAGRより鈍化。
強気ケース 年6.0% 約1兆6,249億円 処遇改善支援、ICT化、加算取得、人材確保策が進み、供給能力が改善。

2024年度:報酬改定と処遇改善再編

基本報酬見直し、処遇改善加算の一本化、訪問介護事業への支援強化が進む。小規模事業所では加算取得と経営改善が急務。

2025〜2026年度:人材確保と訪問密度改善が焦点

第9期介護保険事業計画に基づく介護職員需要が高まり、採用・定着・教育標準化・移動効率改善が競争力を左右する。

2027年度:次期報酬改定リスク

報酬引締めの可能性、加算要件の変化、地域差への対応が課題。制度変化に耐える収益構造が必要。

2028〜2029年度:複合サービス・保険外支援の拡大

訪問介護単体ではなく、居宅介護支援、デイサービス、福祉用具、見守り、買い物同行などを組み合わせる事業者が優位になる。

主要リスク

第一にヘルパー供給不足、第二に過疎地・広域エリアの移動非効率、第三に2027年度改定以降の報酬引締め、 第四に利用者・家族の保険外負担増による需要抑制です。

とくに大きいのは、市場需要は増える一方で供給キャパが伸びず、事業者が需要を取り切れない「売上機会損失」の拡大です。

推奨戦略

訪問介護市場での勝ち筋は、人材確保力、移動効率、高付加価値加算の取得力、多サービス連携の4点に集約されます。 需要増だけに依存するのではなく、商圏、採用、教育、加算、保険外支援を一体で設計することが重要です。

1. 高密度商圏への再配置

徒歩・自転車・短距離移動で回せるエリアに訪問を集中させ、移動時間/提供時間比率を改善します。 訪問介護では売上以上に移動効率が利益に効きます。

2. 居宅介護支援・デイサービスとの複合化

ケアマネジャー、デイサービス、福祉用具、施設サービスとの連携を強め、紹介導線を自前化します。 単独訪問介護よりもLTVと稼働率を安定させやすくなります。

3. 加算取得の専門体制

処遇改善加算、特定事業所加算、緊急時対応、認知症関連加算などを取り切る体制を整えます。 加算管理は訪問介護事業の収益改善に直結します。

4. 採用経路の拡張

中高年経験者だけに依存せず、学生、潜在資格者、障がい福祉経験者、短時間勤務希望者まで採用対象を広げます。 教育標準化と同行支援が定着率を高めます。

5. 保険外生活支援の設計

買い物同行、見守り、家族向け報告、軽微な生活支援などを周辺商品化し、利用者LTVを高めます。 ただし、介護保険サービスとの区分管理が必要です。

事業者に求められる視点

訪問介護市場は需要増が見込まれる一方、単純な拠点拡大だけでは収益化しにくい市場です。 商圏密度、ヘルパー定着、ICTによる記録・移動効率化、加算取得、保険外支援の設計を一体化することで、 人材不足下でも持続可能な収益モデルを構築できます。

 

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