外食チェーンにおける和食メニュー
市場動向レポート
国内の日本食市場において、寿司、そば・うどん、牛丼・丼物、定食、和風ファミリーレストラン、和風居酒屋などの 和食メニューは、物価上昇下でも需要が崩れにくい領域です。 本ページでは、外食チェーンにおける和食メニュー市場の規模、成長率、主要プレーヤー、消費者トレンド、事業機会を整理します。
外食チェーンにおける和食メニュー市場は、客数回復だけでなく、客単価上昇、インバウンド需要、デジタル化、省人化投資によって成長しています。 とくに和風ファストフード、麺類、和風ファミリーレストランは2023〜2025年に高い伸びを示しました。 一方で、持ち帰り米飯/回転寿司は伸びが相対的に緩やかで、価格疲れや家庭内代替の影響を受けやすい構造も見えています。
市場は客単価主導で拡大
2025年の外食全体は売上107.3%、客数102.9%、客単価104.3%でした。 日本食市場でも、値上げ浸透と高付加価値商品の投入が成長を押し上げています。
日常食と観光需要の二面性
うどん、牛丼、定食は日常食として高頻度利用され、寿司や和食業態は訪日客の観光需要も取り込めます。 和食メニューは生活需要と観光需要を併せ持つ点が強みです。
競争軸は低価格から運営力へ
競争優位は「安い和食」単独ではなく、オペレーション効率、デジタル接点、限定商品、回転率を組み合わせた店舗運営力へ移っています。
本レポートでは、国内市場における和食メニューを主力または主力級に扱う外食チェーンを対象とします。 対象には、寿司、そば・うどん、牛丼・丼物、定食、和風ファミリーレストラン、和風居酒屋を含みます。 ただし、牛丼・定食・和風居酒屋を横断したチェーン限定の公的単一市場統計は未整備であるため、 市場規模は公式可視領域+チェーン成長率による参考推計として整理します。
| 指標 | 2023年実績 | 2024年参考値 | 2025年参考値 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| すし店市場 | 1兆4,974億円 | 1兆5,364億円 | 1兆5,809億円 | 2024・2025は「持ち帰り米飯/回転寿司」の成長率を代理適用 |
| そば・うどん店市場 | 1兆3,774億円 | 1兆5,509億円 | 1兆6,890億円 | 2024・2025は「麺類」の成長率を適用 |
| コア可視市場合計 | 2兆8,748億円 | 3兆0,873億円 | 3兆2,699億円 | 筆者試算。公式可視領域にチェーン売上動向を代理適用 |
出所・注記:2023年の「すし店」「そば・うどん店」は外食産業市場規模推計の公表値。 2024年・2025年は日本フードサービス協会の年次売上前年比を代理適用した参考値です。
売上前年比でみると、和食チェーンの主力サブセグメントは2023年以降ほぼ一貫して高成長で推移しています。 2023年はポストコロナの人流回復、2024年は値上げ浸透、2025年は高単価メニューと訪日客需要が寄与しました。 一方、持ち帰り米飯/回転寿司は他サブセグメントと比べて伸びが緩やかです。
2023〜2025年 和食チェーンサブセグメント別 売上前年比
単位:%。日本フードサービス協会年次調査をもとに作成。
| チェーンサブセグメント | 2023年 | 2024年 | 2025年 | 2023〜2025累計 |
|---|---|---|---|---|
| 和風ファストフード | 114.3% | 113.0% | 109.8% | 141.8 |
| 麺類 | 116.3% | 112.6% | 108.9% | 142.6 |
| 持ち帰り米飯/回転寿司 | 106.3% | 102.6% | 102.9% | 112.2 |
| 和風ファミリーレストラン | 118.5% | 110.8% | 108.9% | 143.0 |
| 居酒屋 | 132.3% | 105.3% | 104.4% | 145.4 |
出所:日本フードサービス協会年次調査。累計は2022年を100とした筆者計算。
外食チェーンにおける和食メニュー市場は、市場全体では分散的ですが、カテゴリ単位では上位企業の存在感が強い構造です。 寿司ではFOOD & LIFE COMPANIESとくら寿司、うどんではトリドールホールディングス、牛丼・丼物ではゼンショーホールディングス、吉野家ホールディングス、松屋フーズホールディングスが主要プレーヤーです。
| 企業 | 直近開示売上高 | 主力フォーマット | 競争上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| ゼンショーホールディングス | 国内外食売上高 7,121億円 | すき家、はま寿司、なか卯等 | 和食大衆業態の多フォーマット運営 |
| FOOD & LIFE COMPANIES | 連結売上収益 4,296億円 | スシロー、京樽、杉玉等 | 回転寿司・寿司周辺で最大級 |
| くら寿司 | 売上高 2,451億円 | 回転寿司 | 寿司単一カテゴリで強固 |
| トリドールホールディングス | 売上収益 2,682億円 | 丸亀製麺 | うどんの圧倒的ブランド力 |
| 吉野家ホールディングス | 連結売上高 2,049億円 | 吉野家、はなまる等 | 牛丼・日常食需要に強い |
| 松屋フーズホールディングス | 売上高 1,542億円 | 松屋、松のや等 | 価格訴求とSKU拡張で差別化 |
出所・注記:各社IR・公式会社概要。会計範囲が異なるため、厳密なシェア比較ではなく参考比較です。
足元の日本食市場では、「節約」と「ちょっとした贅沢」が同居しています。 和風ファストフードや麺類は、短時間・日常食・単身利用に強く、価格改定下でも需要耐性があります。 一方で、回転寿司や持ち帰り米飯は、家庭内代替や買い控えの影響を受けやすく、客数鈍化への対応が課題です。
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価格体系の再設計 昼食帯のエントリー価格は守りつつ、夜間、限定メニュー、セット、トッピングで粗利を取る設計が重要です。
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短時間・日常利用への強さ 麺類、丼物、定食は、ランチ・夕食・単身利用に適し、外食チェーンの中でも高頻度来店を取り込みやすい業態です。
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訪日客需要の上振れ 都市部・観光地では、寿司、うどん、天ぷら、定食などの和食メニューがインバウンド需要を取り込みやすい構造です。
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アプリ注文・待ち時間短縮・多言語表示 チャネル面では、店内飲食回帰とテイクアウト補完が併存します。今後はアプリ注文、順番待ち管理、キャッシュレス、多言語表示が収益性改善の焦点です。
和食チェーンは、日常食・外食・観光需要の三面市場を持つ一方で、原材料費、人件費、米価、水産原料、人手不足の影響を受けやすい市場です。 2023〜2025年の成長が客単価依存である点は、値上げ余地が無限ではないことを示します。
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 強み | 和食は日常食・外食・観光需要の三面市場を持ち、麺類や丼物は高頻度来店に向きます。 |
| 弱み | 労働集約度が高く、原材料・人件費上昇が利益を圧迫しやすい構造です。 |
| 機会 | インバウンド増、都市型小型店、限定メニュー、高付加価値ネタ、発酵・健康訴求が成長余地になります。 |
| リスク | 価格疲れ、客数鈍化、米価・水産原料変動、人手不足の常態化が主要リスクです。 |
市場の分水嶺:値上げ耐性のある体験価値へ移行できるか
外食チェーンにおける和食メニューは、単なる低価格競争から、 「安定品質」「回転率」「限定感」「デジタル導線」「訪日客対応」を組み合わせた運営競争へ移行しています。
とくに、寿司・うどん・丼物・定食の各カテゴリでは、基本価格を極端に上げるよりも、 追加具材、サイドメニュー、季節限定、夜間利用、ファミリー利用、インバウンド利用を組み合わせる価格階段設計が有効です。
短期では価格階段の最適化、中期では省人化投資と需要の平準化が重要です。 和食チェーンの競争軸は、単なる「和食らしさ」ではなく、安定品質と回転率を両立する運営能力へ移行しています。
短期:価格階段の最適化
昼食帯の入口価格は守り、夜間・限定・セット・トッピングで粗利を上げる設計が有効です。 麺類、丼物、定食は「基本価格維持+追加具材」で単価を高めやすい領域です。
中期:省人化とデジタル化
注文、配膳、会計、順番待ちのデジタル化により、厨房・ホール双方の人時生産性を高める必要があります。 人手不足下では、省人化投資が利益率の防衛策になります。
訪日客対応の標準化
多言語メニュー、アレルゲン表記、キャッシュレス導線、写真付きメニューを標準化することで、 観光地・都市部の和食チェーンは追加需要を取り込みやすくなります。
2023〜2025年の回復経路は、ポストコロナの人流回復、値上げ浸透、客単価主導の成長、訪日客需要の上振れという流れで整理できます。
2023年:ポストコロナ移行で需要回復
和風ファストフード114.3%、麺類116.3%、和風ファミリーレストラン118.5%、居酒屋132.3%。 人流回復が外食チェーンの和食メニュー需要を押し上げました。
2024年:値上げ浸透と客単価上昇
和風ファストフード113.0%、麺類112.6%、和風ファミリーレストラン110.8%。 コスト上昇を背景に、価格改定と高付加価値メニューが市場成長に寄与しました。
2025年:高成長継続も客数は鈍化
和風ファストフード109.8%、麺類108.9%、和風ファミリーレストラン108.9%。 訪日外客数が過去最高を更新する一方、回転寿司は相対的に伸びが鈍化しました。
引用サイト一覧
日本フードサービス協会 2023年年間結果報告
和風ファストフード、麺類、回転寿司、和風ファミリーレストランなどの売上前年比を確認する基礎資料。
日本フードサービス協会 2024年年間結果報告
2024年の外食チェーン動向、客数、客単価、業態別売上推移を確認する資料。
日本フードサービス協会 2025年年間結果報告
2025年の和食チェーンサブセグメント別成長率、外食全体の客数・客単価動向を確認する資料。
厚生労働省 生活衛生関係営業の動向等
すし店、そば・うどん店など、生活衛生関係営業に関する市場規模・業態動向の確認資料。
日本政府観光局 JNTO 訪日外客数
2025年の訪日外客数とインバウンド需要の拡大を確認するための公式資料。
ゼンショーホールディングス 中期経営計画資料
すき家、はま寿司、なか卯など、和食大衆業態を複数展開する企業の事業規模確認資料。
FOOD & LIFE COMPANIES 会社概要
スシロー、京樽、杉玉など、寿司関連フォーマットを展開する企業情報。
FOOD & LIFE COMPANIES 業績ハイライト
連結売上収益、業績推移、寿司チェーン大手の収益規模を確認する資料。
くら寿司 業績ハイライト
回転寿司カテゴリにおける大手チェーンの売上高・業績動向を確認する資料。
トリドールホールディングス 連結財務諸表
丸亀製麺を中心とするうどん業態の事業規模・収益動向を確認する資料。
吉野家ホールディングス 統合報告書2025
牛丼・日常食需要に強い和食チェーンの経営方針、事業規模、業態構成の確認資料。
松屋フーズホールディングス 業績ハイライト
松屋、松のやなど、価格訴求とSKU拡張を進める和食・定食系チェーンの業績確認資料。
