東京23区オフィス市場
需給再均衡と投資機会
東京23区のオフィス市場は、コロナ後の空室増加局面をおおむね通過し、需要回復・出社価値の再評価・働き方再設計が同時進行する再評価フェーズに入っています。本ページでは、空室率、賃料、大規模供給、テレワーク定着、REIT資産構成をもとに、東京23区オフィス市場の需給再均衡と投資機会を整理します。
2024年
2024年
2026年3月
円/坪・2026年3月
東京23区オフィス市場では、需要回復と供給サイクルの変化が重なり、需給は引き締まり方向にあります。特にAクラス・大規模・好立地・環境性能対応物件では、空室率低下と賃料上昇が同時に進みやすい局面です。
空室率は改善局面へ
森ビル調査では、東京23区大規模オフィスビルの2024年吸収量は113万㎡、空室率は3.7%まで低下しました。
三鬼商事の都心5区データでも、2026年3月時点の平均空室率は2.22%と、引き締まりが続いています。
賃料は上昇フェーズへ
都心5区の平均賃料は2026年3月時点で22,302円/坪となり、改善傾向が続いています。
建築費上昇やインフレ連動型契約の導入も、賃料を下支えする要因になっています。
供給は2027〜2028年に低下
東京23区の大規模オフィス供給は、2025年132万㎡、2026年90万㎡の後、2027年45万㎡、2028年65万㎡へ低下する見通しです。
低供給期は、既存優良ビルの稼働率と賃料形成に追い風となります。
ハイブリッド勤務が前提に
首都圏の雇用型テレワーカー比率は37.7%で、ハイブリッド勤務はすでに定着領域にあります。
今後は「出社か在宅か」ではなく、面積再配置とグレード選別が市場の中心テーマになります。
需給、資本市場、働き方、供給見通しを横断して見ると、東京23区オフィス市場は「量の回復」から「質の選別」へ移っています。
| 指標 | 最新値 | 含意 |
|---|---|---|
| 国内リート全体資産規模 | 31.3兆円 | 不動産証券化市場の厚みを示す。 |
| オフィス資産規模 | 11.4328兆円 | 国内リート最大用途。構成比は36.5%。 |
| 東京23区大規模オフィス吸収量 | 113万㎡/2024年 | 需要は供給を大きく上回り、需給改善が進む。 |
| 東京23区大規模オフィス空室率 | 3.7%/2024年 | コロナ後の空室増加局面から改善。 |
| 都心5区平均空室率 | 2.22%/2026年3月 | 足元でも引き締まりが継続。 |
| 都心5区平均賃料 | 22,302円/坪・2026年3月 | 賃料上昇局面への移行を示す。 |
| 首都圏雇用型テレワーカー比率 | 37.7% | ハイブリッド勤務を前提とした面積再設計が必要。 |
| 東京23区大規模オフィス供給見通し | 2025年132万㎡、2026年90万㎡、2027年45万㎡、2028年65万㎡、2029年127万㎡ | 2027〜2028年の供給抑制が中期の追い風。 |
需給再均衡の本質
東京オフィス市場を読むうえで重要なのは、「出社回帰」か「テレワーク継続」かという単純な二分法ではありません。実際には、出社価値を高めるための立地・内装・共用部・環境性能・街区価値が重視され、面積の総量よりもどのようなオフィスへ移るかが問われています。
需要は戻っていますが、すべてのオフィスに均等に戻っているわけではありません。Aクラス、大規模、駅近、ESG対応、セットアップ済み、複合開発内オフィスなど、出社理由を作れる物件に需要が集中しやすい構図です。
開発・運営、REIT、商品企画、エリア戦略の各レイヤーで、競争軸は「量」から「質」へ移っています。
| 区分 | 主なプレーヤー/商品 | 現状の特徴 |
|---|---|---|
| 開発・運営 | 三井不動産、三菱地所、住友不動産、森ビル、森トラスト | 大規模再開発と都心集積で優位。丸の内、日本橋、六本木、虎ノ門、品川などの街区価値が競争力になる。 |
| オフィスREIT | 日本ビルファンド投資法人、ジャパンリアルエステイト投資法人、大和証券オフィス投資法人 | 安定運用の投資受け皿。物件入れ替えやバリューアッド機会も注目される。 |
| 商品トレンド | Aクラス、セットアップ、フレキシブルオフィス、ESG認証、複合開発型 | 入居意思決定では、賃料だけでなく採用力、出社価値、環境性能、即時利用性が重視される。 |
| エリアテーマ | 日本橋・八重洲・京橋、品川、赤坂・六本木 | 供給増と広域回遊の中心地帯。大規模開発と交通結節性が中長期の評価軸になる。 |
オフィス需要の有無ではなく、「選ばれるオフィス」をどのように作るかが事業機会の中心です。
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築古中規模ビルの再商品化 居抜き、セットアップ、フレキシブル利用、環境性能改善を組み合わせることで、都心立地の相対価値を引き上げやすくなります。
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供給増加エリアでの先行リーシング 日本橋・八重洲・京橋、品川、赤坂・六本木などでは、供給増を前提に、早期のテナント獲得とサービス型運営が重要になります。
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複合再開発による街区価値の形成 オフィス単体ではなく、ホテル、住宅、商業、交流機能を組み合わせた複合アセットが、テナント獲得と賃料維持で有利になります。
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オフィスREIT・私募ファンドのバリューアッド 物件入れ替え、築古再生、ESG改修、セットアップ化により、既存ストックのNOI改善を狙う投資機会が増えやすい局面です。
結論
東京23区オフィス市場は、テレワークに敗れた市場ではありません。むしろ、働く場の価値を選別して再定義する市場へ移行しています。
今後の勝ち筋は、オフィス需要の有無を議論することではなく、出社する理由をつくれる立地・仕様・サービス・街区価値を持つ資産へ集中することです。短期的には賃料上昇と低空室が続きやすく、中長期では築古再生とグレード差対応が収益の分かれ目になります。
主要出典・関連リソース
森ビル
東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査2025。供給量、吸収量、空室率の基礎資料。
三鬼商事
都心5区を中心としたオフィスマーケットデータ。平均空室率、平均賃料の確認に有用。
国土交通省
令和7年度テレワーク人口実態調査。首都圏におけるテレワーク定着度の把握に利用。
不動産証券化協会
ARESマンスリーレポート。国内リートの用途別資産規模を確認できる。
三井住友信託銀行
国内主要7都市オフィス市場の展望2026。賃料、空室率、建築費上昇の影響を整理。
三菱UFJ信託銀行
東京・大阪のオフィス市場予測。今後の新規賃料上昇見通しの参考資料。
三菱UFJ信託銀行
オフィス賃貸市場の概要。グレードアップ移転、空室減少、賃料上昇の背景整理に有用。
国土交通省 地価公示
令和8年地価公示。地価上昇がオフィス開発・投資採算に与える影響を確認できる。
日本ビルファンド投資法人
国内オフィスREITの代表的プレーヤー。ポートフォリオと運用動向の確認に有用。
ジャパンリアルエステイト投資法人
オフィス特化型REITのポートフォリオデータ。都心オフィス投資の参考資料。
大和証券オフィス投資法人
オフィスREITの運用事例。物件規模、エリア、稼働率の把握に利用できる。
