車載LiDAR市場調査レポート
価格競争・量産採用・規制動向を整理
車載LiDAR市場は、量産乗用車向けADASとロボタクシーなどのロボティックカー向けで要求仕様と単価が大きく異なるのが特徴です。 本ページでは、市場規模レンジ、成長要因、主要企業比較、価格帯、供給チェーン、規制・標準、技術トレンドを整理し、 車載LiDAR市場調査の要点をひと目で把握できるようにまとめています。
車載LiDARは「ADAS領域」と「ロボティックカー領域」で価格、性能、導入目的が大きく異なり、市場推計は定義差によって大きく振れます。 公開情報ベースでも、世界の自動車用LiDAR市場は2023年約5.0億USDから2030年約9.4億USDという比較的狭義の推計から、 2024年約11.9億USDから2030年約95.9億USDという広義の推計まで幅があります。 量産化で価格は下がる一方、性能要件、統合難易度、機能安全、SOTIF、レーザー安全、外装統合コストが引き続き大きなハードルです。
市場規模は“定義差”で大きく変動
車載LiDAR市場は、ハード単体を対象とするか、認識ソフトや統合ソリューションを含むかで規模が大きく変わります。 そのため、調査ではまず自社の対象範囲を固定してから市場を評価する必要があります。
価格は下落、ただし統合難易度は高止まり
ADAS向け典型価格は短距離で約300USD、長距離で約600USDとされますが、 汚れ対策、加熱、洗浄、熱設計、ECU連携、検証工数など、センサー本体以外のコストが収益性を左右します。
量産採用の前提は安全規格と法規適合
IEC 60825-1、ISO 26262、ISO 21448、UN-R157などの適合は量産採用の前提条件です。 特にLevel 3を視野に入れる場合、規制対応力そのものが競争優位になります。
車載LiDAR市場の見方
この市場は、単純な“センサー販売台数”ではなく、用途別の単価差、量産採用の進度、規制適合の難度、車両統合コストを同時に見ないと実態を捉えにくい領域です。 とくにADAS向けでは、LiDAR単体のスペック競争よりも、OEMにとって扱いやすい外装統合性や耐環境性、ソフト連携、検証効率が重要になります。
一方、ロボティックカー領域では高性能機の需要が継続する可能性がありますが、単価が高いぶん導入対象は限定されやすく、 長期的にはこちらも価格低下圧力を受けるとみられます。
下表は、公開されている基準年とCAGRから年次を等比で補間・外挿したモデル推計です。 低位は比較的狭義の定義、高位はより広義の定義を前提としており、定義差によるレンジをそのまま示しています。
| 年 | 低位推計(USD十億) | 高位推計(USD十億) |
|---|---|---|
| 2021 | 0.422 | 0.419 |
| 2022 | 0.461 | 0.594 |
| 2023 | 0.504 | 0.840 |
| 2024 | 0.551 | 1.190 |
| 2025 | 0.603 | 1.685 |
| 2026 | 0.659 | 2.386 |
| 2027 | 0.721 | 3.378 |
| 2028 | 0.788 | 4.783 |
| 2029 | 0.862 | 6.773 |
| 2030 | 0.942 | 9.590 |
用途別でみると、ADAS向けの伸びがより大きく、量産車への実装拡大が市場成長の中心になる構図が見えます。
| 年 | 車載合計(USD十億) | うちADAS | うちロボティックカー |
|---|---|---|---|
| 2021 | 0.099 | 0.061 | 0.038 |
| 2022 | 0.315 | 0.112 | 0.203 |
| 2023 | 0.459 | 0.199 | 0.260 |
| 2024 | 0.687 | 0.355 | 0.333 |
| 2025 | 1.050 | 0.632 | 0.418 |
| 2026 | 1.657 | 1.125 | 0.532 |
| 2027 | 2.698 | 2.000 | 0.698 |
| 2028 | 3.788 | 3.019 | 0.769 |
| 2029 | 5.015 | 4.159 | 0.856 |
| 2030 | 6.405 | 5.371 | 1.034 |
車載LiDARは、Level 3や高度ADASの進展により期待が高まる一方で、性能・安全・コストの同時達成が難しい市場です。
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成長要因①:Level 3 / 高度ADASのODD拡大 高レンジ・高分解能・夜間性能に優れたセンサー需要が増加し、LiDARはカメラやレーダーを補完する中核センサーとして再評価されています。
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成長要因②:価格ターゲットの明確化 量産ADAS向けでは価格目標が具体化しており、半導体統合や部材最適化によって普及可能な価格帯へ近づける動きが加速しています。
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成長要因③:中国勢の量産能力と値下げ圧力 大手サプライヤーが量産能力を拡張し、従来より低価格帯の車種にもLiDARを標準装備として広げる余地が生まれています。
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阻害要因:統合難易度・代替技術・規制対応 汚れ、加熱、洗浄、熱設計、誤検知検証などの車両統合負荷は大きく、加えてイメージングレーダー等の代替技術も競合します。 さらに、ISO 26262やSOTIF、レーザー安全、型式認可への適合遅延は採用時期を左右します。
公開スペックが確認できる範囲で、主要プレイヤーの代表製品を整理しています。レンジや点群性能は、反射率、環境光、フレームレートなどの条件付きである点に注意が必要です。
| 企業 | 代表製品 | 波長 | 代表レンジ | 視野角(HxV) | 分解能 / 点群 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Hesai Technology | AT128 | 公開情報不足 | 210m @10%反射率 | 120° × 25.4° | 0.1° × 0.2°、1,536,000 pts/s | 車載向け長距離LiDARとして仕様公開 |
| Innoviz Technologies | InnovizTwo | 905nm | 0.3–300m | 120° × 43° | 最大0.05° × 0.05° | ISO 26262準拠、ASIL B(D)表記 |
| RoboSense | M1 Plus | 905nm | 200m(180m @10%) | 120° × 25° | 787,500 pts/s | IEC 60825-1 Class 1、ISO 26262 ASIL-B、販売価格例あり |
| RoboSense | M1(参考) | ー | 150m超(10%目標、最大200m) | 120° × 25° | 0.2° × 0.2°、0.75M pts/s | SOP版の発表時スペック例 |
| Valeo | SCALA 3(Gen 3) | ー | 200m @10%反射 | 120° × 26° | 0.05°、最大12.5M pts/s(10fps) | 量産・清掃・加熱など統合機能も訴求 |
| Luminar Technologies | 技術例 | 1550nm | ー | ー | ー | 1550nmファイバーレーザーとInGaAs検出器の採用を明記 |
| MicroVision | MAVIN | ー | ー | 最大60° × 22° | ー | 車載統合性を訴求 |
車載LiDARの価格は用途により二極化しており、ADAS向けは量産価格の低下が主戦場、ロボティックカー向けは依然として高性能・高単価の色が強い状況です。
ADAS向け典型価格
短距離向けで約300USD、長距離向けで約600USDが典型例として示されます。 量産セグメントでは、この価格帯で成立するBOMと統合性を両立できるかが重要です。
ロボティックカー向け価格
高性能機では1,000〜10,000USD帯が想定されます。 高精度・長距離・全天候対応への要求が高く、現時点では価格より性能優先の導入も残ります。
超低価格化の圧力
次世代品を200USD未満に近づけようとする動きも報じられており、単価下落は普及促進要因である一方、 既存製品の価格崩れや在庫評価リスクにもつながります。
公開情報のみで厳密なBOM構成比を断定することは困難ですが、車載LiDARのコストを左右する要素は比較的整理できます。
| コスト要素 | 典型ドライバー | コスト感度(定性的) |
|---|---|---|
| レーザー光源 | 905nm VCSEL / EEL、1550nmファイバーレーザー、出力、寿命、歩留まり | 1550nm系は部材・実装コストが上振れしやすい |
| 受光素子 | APD / SPAD / SiPM / InGaAs、ノイズ性能、読み出し回路統合 | SPADは画素数や積層投資が鍵 |
| 光学・操舵系 | MEMS、ミラー、レンズ、フィルタ、視野角、点密度、耐環境性 | 機械要素は信頼性と校正コストが増えやすい |
| 演算・ソフト | ASIC / SoC / ECU、認識、自己診断、OTA対応、ASIL / SOTIF要求 | 差別化の源泉だが開発費負担も大きい |
| 統合・検証 | 汚れ対策、加熱・除氷、洗浄、外装統合、誤検知検証、ODD拡大 | 見落としやすいが総コスト影響は大きい |
車載LiDARは、部品、モジュール、ソフト、安全機構、Tier1統合、OEM統合まで多層構造です。単体性能だけでなく、どこを自社が担うかで利益構造が変わります。
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Laser Source VCSEL、EEL、ファイバーレーザーなどの光源が起点となり、波長選択とアイセーフ設計が基本仕様を決めます。
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Beam Steering & Optics / Receiver Optics MEMS、ミラー、レンズ、フィルタなどが視野角、点密度、耐環境性を左右します。
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Photodetector / AFE / TDC APD、SPAD、SiPM、InGaAsと、その読み出し回路群が感度と分解能、ノイズ耐性を左右します。
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Compute / Diagnostics / Safety / Perception Software ASIC、SoC、自己診断、安全機構、検出・追跡・分類アルゴリズムが差別化の中核になります。
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Tier1 Integration / OEM Vehicle Integration 最終的には車体への搭載、熱設計、汚れ・除氷対策、検証、型式認可、運用要件まで含めた統合が必要です。
車載LiDARは、高度ADAS・自動運転で使われる以上、性能だけでなく安全規格適合の蓄積が必須です。
IEC 60825-1
レーザー安全の基礎となる規格で、車載LiDARはアイセーフ設計、すなわちClass 1相当での実装が前提になります。
ISO 26262 / ISO 21448
ISO 26262は機能安全、ISO 21448はSOTIFの枠組みとして、意図した機能の安全を補完します。 車載採用では両方を踏まえた設計・検証が不可欠です。
UN-R157
Level 3運転の法規フレームとして重要度が高く、量産車への高度自動運転機能実装の前提条件として参照されます。
LiDAR技術は高感度受光、高集積化、小型化、センサーから認識ソフトまでの統合プラットフォーム化へ向かっています。
高感度受光と高解像度化
SPADなどの高感度受光素子や3D積層技術により、点群品質と距離分解能の向上が進みます。
905nmと1550nmの再設計
アイセーフ限界と性能のトレードオフの中で、905nmと1550nmの使い分けや最適化が継続します。
FMCW LiDARとPIC
コヒーレント検波を用いたFMCW LiDARやフォトニック集積による小型化・耐環境性向上が次世代テーマとして注目されます。
統合プラットフォーム化
ハード単体ではなく、認識ソフト、自己診断、フュージョン、OTA運用まで含む統合提案が競争軸になります。
主要リスク
急速な価格下落による収益性悪化、外装統合コストの見落とし、規制適合の遅延、輸出規制、レーダーやカメラ強化への投資シフトが主要リスクです。
参照元(サイト名・URL)
Yole Intelligence(Embedded Vision Summit資料)
用途別売上、ADAS・ロボティックカーの成長イメージ整理に使用。
MarketsandMarkets
自動車用LiDAR市場の高位推計レンジの参照元。
Grand View Research
自動車用LiDAR市場の低位推計レンジの参照元。
Valeo(SCALA Gen 3仕様)
SCALA 3の代表仕様、量産・統合訴求の確認用。
Hesai Technology(AT128仕様)
AT128のレンジ・分解能・視野角の確認用。
Innoviz(InnovizTwo仕様)
InnovizTwoの905nm、レンジ、機能安全表記の確認用。
RoboSense(M1 Plus公式ストア)
M1 Plusの価格例・仕様参照。
Luminar(技術構成)
1550nmファイバーレーザーとInGaAs検出器の技術構成確認用。
ISO 26262
車両機能安全の基本規格。
ISO 21448:2022
SOTIFの基本枠組みの参照先。
UNECE(UN R157)
Level 3運転に関する国際法規の参照先。
Mercedes-Benz
UN-R157に基づく認可公表事例。
Reuters
Hesaiの価格引下げ報道の参照先。
Car Watch
SCALA 3のコスト・量産に関する記事。
MDPI Sensors
車載LiDAR要件レビューの参照元。
Sony Semiconductor Solutions
SPAD ToFの基礎説明。
Nature Communications
FMCW LiDAR / PIC関連の論文参照先。
