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炭素除去・回収・貯留 / DACCS

直接空気回収+貯留(DACCS)
市場調査レポート

DACCS(Direct Air Capture with Carbon Storage)は、空気中の低濃度CO₂を直接回収し、圧縮・輸送・地中貯留まで一体で行う高耐久な炭素除去手段です。本ページでは、市場規模、主要プレーヤー、技術成熟度、価格レンジ、政策動向、投資機会の観点から、DACCS市場の現状と今後の見通しを整理しています。

$0.122B
DAC市場規模(2024年)
$4.249B
DAC市場規模(2029年予測)
$670/t
DACCS損益分岐価格(2025年平均)
TRL 7–8
技術成熟度の目安
市場定義と市場の見方

本レポートでは、DACCS市場を「DAC装置・サービス市場(売上高)」と「高耐久CDRクレジット価格(DACCS)」の二層で整理しています。前者は市場レポートの公表値を参照し、後者は市場参加者の支払意思額と供給者側の損益分岐価格のギャップを見ることで、市場形成の現実的な距離感を把握する構成です。

① DAC装置・サービス市場

Research and Marketsの公表ページでは、世界DAC市場は2024年1.2188億USD2029年42.4億USD、さらに2034年115.2億USDとされています。装置販売、統合システム、関連サービスなどの定義差には留意が必要です。

一方、MarketsandMarketsでは2023年0.62億USD → 2030年17.27億USDとされており、市場規模は出典ごとにかなり振れます。

② 高耐久CDRクレジット価格

CDR.fyiとOPISの共同サーベイでは、2025年時点でDACCSクレジットの平均像として、購入者の“Good Value”が約458USD/t、供給者の“Breakeven”が約670USD/tとされています。

市場はまだ価格発見の途中段階にあり、オフテイク契約や政策支援が事業採算を大きく左右します。

市場形成の本質

DACCSは単なる装置市場ではなく、低炭素エネルギー調達、MRV、輸送・貯留インフラ、長期オフテイクが一体となって初めて成立する市場です。したがって、ハードウェア単独ではなく、プロジェクト実行力と制度適合力が競争力になります。

市場規模の推移と予測

以下はResearch and MarketsのCAGRをもとに整理した世界DAC市場の年次推計です。2021〜2024年はCAGRから逆算した参考値であり、厳密な実績統計ではありません。過去5年は急拡大局面、今後5年も高成長が続く前提ですが、政策・資本コスト・供給網制約により振れ幅は大きいとみるべきです。

市場規模(USD) 市場規模(JPY換算) 補足
2021 0.109億USD 約15.2億円 CAGRからの逆算推計
2022 0.243億USD 約34.1億円 CAGRからの逆算推計
2023 0.545億USD 約76.3億円 CAGRからの逆算推計
2024 1.219億USD 約171億円 公表値ベース
2025 2.480億USD 約347億円 推計
2026 5.05億USD 約707億円 推計
2027 10.27億USD 約1,437億円 推計
2028 20.89億USD 約2,924億円 推計
2029 42.49億USD 約5,949億円 公表値に近い水準
2030 51.88億USD 約7,263億円 延長推計

成長率の見立て

上表からみると、2021→2025年の年平均成長率は約+118%/年2026→2030年の年平均成長率は約+79%/年です。初期市場らしく非常に高い成長率ですが、これは裏を返せば市場のベースがまだ小さいことを示しています。

したがって、DACCS市場は「巨大市場がすでに立ち上がっている」というより、技術・政策・オフテイクの条件が揃った案件から順次立ち上がる、案件主導型の成長市場と捉えるのが実務的です。

主要プレーヤーと事業構造

DACCS市場では、回収技術の方式差だけでなく、資金調達力、オフテイクの獲得力、貯留先との接続、政策適用の巧拙が競争優位を左右します。以下は市場でよく参照される代表プレーヤーです。

Climeworks(スイス)

固体吸着型DACの代表企業で、商用初期設備の展開実績を持つプレーヤーです。市場レポートでも認知度・競争地位が高く、DAC市場の象徴的存在です。

Heirloom / CarbonCapture / Global Thermostat

Heirloomは鉱物化・固体吸着系、CarbonCaptureはモジュラー型、Global Thermostatは長年の技術開発・実証で知られます。いずれもスケールアップ戦略と案件組成力が重要です。

1PointFive / Verdox

1PointFiveは大規模DAC展開計画で広く言及される企業です。Verdoxは電気化学系など新方式を志向しており、DACの技術ポートフォリオ拡張を担う存在として注目されています。

技術概要と成熟度

DACは空気中の極めて低いCO₂濃度から分離を行うため、一般のポイントソースCCSよりも分離負荷が大きく、エネルギー消費・設備コストが高くなりやすい技術です。商用初期設備は存在するものの、大規模量産・低コスト化はまだ途上にあります。

コスト構造と価格レンジ

DACCSの収益性を考えるうえでは、「供給者コスト」と「需要家の支払意思額」の間にまだギャップがあることが重要です。技術進歩だけでなく、政策補完・長期契約・インフラ共用が必要になります。

項目 2025年 2030年 示唆
購入者の“Good Value” 約458USD/t 約272USD/t 需要家は時間とともに価格低下を期待
供給者の“Breakeven” 約670USD/t 約341USD/t 供給側も大幅なコスト低下を見込む
論文ベースの長期コスト帯 100〜600USD/tCO₂程度 下限100USD/tは容易ではないとの見方

DACCSコストの支配項目

DACCSのコスト構造は概ね、CAPEX(吸着材・接触器・真空/加熱系)+エネルギー(電力/熱)+O&M+CO₂圧縮・輸送・貯留で構成されます。特に低炭素エネルギーの調達単価と設備稼働率が、最終的なtCO₂あたりコストを大きく左右します。

構造理解としては、総コストの中で回収設備とエネルギーが大半を占め、圧縮・輸送・貯留はその次に位置するという見方が一般的です。ただし、比率はプロジェクト条件により大きく変動します。

政策・規制環境

DACCSは典型的な政策依存型市場です。税制、補助金、公共調達、認証制度の整備によって案件の立地選好や資本流入が変わります。主要地域では、米国が最も強い事業形成シグナルを出している一方、EUは認証整備、日本は制度土台づくりの段階と整理できます。

米国

DOEは地域DACハブ向けに35億USD規模の支援枠を提示しており、IRSの45Q税額控除も案件採算を左右します。現時点では、最も明確に立地インセンティブを提供している市場です。

EU

欧州委員会はCarbon Removals Certification Framework(CRCF)を進めており、炭素除去の品質認証ルールを制度化しつつあります。市場形成そのものというより、認証の信頼性と標準化を整える局面です。

日本

DACCS単体に対する大規模支援は欧米より限定的ですが、CCS法制やGX-ETSなど制度整備は進行中です。将来的に高耐久CDR需要が制度化される可能性はあるものの、価格シグナルの強さは制度設計に依存します。

導入障壁とリスク

DACCS市場の拡大を妨げるのは、単純な技術未成熟だけではありません。エネルギー、制度、サプライチェーン、オフテイクの全てがボトルネックになり得ます。

投資機会とビジネスモデル

DACCSはまだ汎用品市場ではなく、案件組成型のインフラビジネスに近い性格を持ちます。そのため、技術そのものよりも「どう売るか」「どう資金化するか」「どう貯留までつなぐか」が重要です。

短期:長期オフテイクの確保

Microsoftなどに象徴されるように、長期購入契約や前払型オフテイクがファイナンスの基礎になります。高耐久CDRの供給不足期待がある間は、需要家の信用力が最大の資産になります。

中期:政策連動とハブ接続

45QやDACハブのような政策枠を活用し、CO₂輸送・貯留インフラへ接続することで、単独案件の不確実性を下げるモデルが有効です。個別最適よりクラスタ最適の発想が重要です。

長期:認証適合とプレミアム市場維持

CRCFなど国際認証に適合し、高品質クレジットとして販売できるかが中長期の差別化要因になります。義務市場化や公共調達の進展時には、先行適合した事業者が優位に立ちやすくなります。

DACCS市場の実務的な見方

DACCSは「装置が売れるか」ではなく、エネルギー・MRV・貯留・オフテイク・政策を束ねて案件化できるかが本質です。したがって、投資判断では技術比較だけでなく、制度適用可能性とプロジェクト実行能力の評価が欠かせません。

 

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