カーボンプライシング・
カーボンクレジット市場調査
ETS(排出量取引制度)・炭素税・カーボンクレジットを含むカーボンプライシング市場は、脱炭素投資の前提条件として存在感を高めています。世界では制度対象の拡大が進み、日本でも2026年度から排出量取引制度が本格稼働する見通しです。制度需要の立ち上がりと、クレジット品質・適格性の厳格化が同時進行する現在地を整理します。
(World Bank 2025)
(2024年時点の目安)
累計売買成立量(2025/4/11時点)
この市場は、規制による価格付けと、クレジットによる調整メカニズムが重なって形成されます。世界ではカバレッジ拡大、日本ではGX政策と取引制度整備が進み、企業の排出コスト管理は「任意の環境施策」から「制度対応を伴う財務課題」へ移行しつつあります。
カーボンプライシング市場の拡大
世界銀行の整理では、ETS・炭素税・クレジットを含む直接炭素価格の適用が拡大し、世界排出量の約28%がカバーされる局面に入りました。歳入面でも、2023年の公的歳入は1040億ドルに到達しています。
量的拡大だけではなく、制度対象範囲・価格水準・遵守義務の厳格さが、企業の調達・投資判断を左右する段階に入っています。
制度需要とクレジット需要の二層構造
市場需要は、規制対象企業による遵守需要と、自主的オフセットや内部炭素価格運用に基づく需要の二層で構成されます。特に日本では、2026年度からの排出量取引制度本格稼働が前者を押し上げる可能性があります。
一方、ボランタリー市場では供給超過が残っており、価格形成は単純な数量ではなく品質や属性に大きく依存します。
価格透明性と取引インフラの整備
日本では東京証券取引所のカーボン・クレジット市場が価格と売買高の透明性向上に寄与しています。累計売買成立量は2025年4月11日時点で79万2,952t-CO2に達しました。
市場データの公開が進むほど、企業側では予算管理・ヘッジ・調達タイミングの設計が実務論点になります。
品質・適格性要件の強化
供給超過が続く中で、クレジット市場では追加性、方法論、ビンテージ、除去・削減属性、ダブルカウント回避などの品質要件が価格差の主要因になっています。
今後は「安いクレジット」よりも「使えるクレジット」「監査に耐えるクレジット」の選別が重要になります。
市場規模の見方は、制度歳入、取引量、クレジット認定量、価格水準など複数あります。ここでは、世界の炭素価格歳入、日本の制度対象、日本の市場取引・供給量を並べて、実務的な市場感を把握できる形に整理しています。
世界のETS・炭素税歳入は2023年に1040億ドル
2022年約950億ドルから増加し、2023年は初めて1000億ドルを突破。2025年版では2024年も1000億ドル超の水準が示されています。
2026年度から排出量取引制度が本格稼働
前年度までの直近3年度平均でCO2直接排出量10万トン以上の事業者を対象とし、排出枠の割当と保有義務、事業者間取引が制度化される見通しです。
東証カーボン・クレジット市場の流動性が拡大
2025年4月11日までの累計売買成立量は79万2,952t-CO2。価格情報の公開が進み、企業の実務判断に使える市場データが増えています。
J-クレジット認定量は年度ごとに変動が大きい
2013年度2万t-CO2から2023年度147万t-CO2、2024年度90万t-CO2へ。短期で安定的に供給が増えるとは限らず、需給タイト化の可能性も意識されます。
カーボンクレジット市場の論点は「量」より「質」へ
世界では、未償却クレジットのプールが約10億トン規模に拡大した一方、コンプライアンス市場由来の需要が償却を押し上げています。つまり、市場全体では供給超過感が残るものの、需要が集中するのは一定の適格性を満たしたクレジットです。
このため、企業の調達実務では「何トン買うか」だけでは不十分で、除去か削減か、国内か海外か、どの方法論か、どのビンテージか、誰が検証したかまでを含めた購買方針が必要になります。
制度対応、サステナビリティ開示、社内稟議、第三者監査まで見据えると、クレジット市場は単なる環境商材ではなく、リスク管理を伴う調達市場として理解する必要があります。
カーボンプライシング・カーボンクレジット市場は、制度・取引インフラ・供給・需要の複数レイヤーで成り立っています。役割ごとに見れば、どこで価格が決まり、どこでリスクが発生するかが分かりやすくなります。
| レイヤー | 主なプレーヤー | 役割 | 市場インパクト |
|---|---|---|---|
| 国際制度・統計 | 世界銀行 | 炭素価格のカバレッジ、歳入、制度動向、クレジット需給の整理 | 市場全体のベンチマーク形成 |
| 国内制度設計 | 経済産業省、GXリーグ | 排出量取引制度の対象、スケジュール、算定・報告・検証ルールの整備 | 遵守需要の制度的創出 |
| 取引インフラ | 日本取引所グループ、東京証券取引所 | 価格・売買高の公表、市場流動性、取引の透明性向上 | 企業調達の価格参照点を提供 |
| 供給サイド | J-クレジット制度、プロジェクト事業者、審査・MRV機関 | クレジット創出、認証、モニタリング、方法論適用 | 品質差による価格分化を生む |
| 需要サイド | 規制対象企業、自主的オフセット需要家 | 排出枠・クレジットの調達、内部炭素価格運用、削減計画との統合 | 制度強化で市場参加が拡大 |
市場調査上、特に押さえておくべき論点を、制度・価格・供給・実務の観点からまとめています。
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世界市場ではカバー率拡大が続く 世界排出量の約28%が直接炭素価格でカバーされ、炭素価格は一部地域の制度からグローバルな経済インフラへ移行しつつあります。
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日本では2026年度が制度転換点 直近3年度平均で10万トン以上排出する事業者を対象に、排出枠の保有義務と取引が制度化されるため、企業の対応は待ったなしの状況です。
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市場の焦点は「安さ」から「適格性」へ 未償却クレジットの積み上がりがあっても、実際に需要が集まるのは品質・方法論・ビンテージ・用途制約を満たしたクレジットです。
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価格情報の公開は予算管理を変える 取引所の日報や価格公開が進むと、クレジット調達は経営管理の対象となり、予算化・ヘッジ・購入ルール策定が必要になります。
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供給サイドは創出コストを前提に見るべき クレジット創出へ関与する場合、追加性、MRV、モニタリング、登録・審査コストを織り込んだ案件ポートフォリオ設計が欠かせません。
関連リソース
World Bank ─ State and Trends of Carbon Pricing
世界の炭素価格制度、カバレッジ、歳入、クレジット需給を俯瞰する基礎資料。
World Bank ─ State and Trends of Carbon Pricing 2024(PDF)
2023年の歳入1040億ドルやクレジット市場の需給状況を確認できる年次レポートです。
経済産業省 ─ 排出量取引制度
日本の排出量取引制度の対象要件、制度概要、関連資料への入口となる公式ページです。
経済産業省 ─ 排出量取引制度リーフレット(PDF)
制度スケジュールや対象事業者の考え方をコンパクトに確認できる資料です。
GXリーグ公式 ─ GX-ETS
GX-ETSのルール、ガイドライン、算定・報告・検証の枠組みを確認できます。
日本取引所グループ ─ カーボン・クレジット市場日報
売買高や価格など、日本のカーボンクレジット市場データを把握するための基礎情報です。
金融庁 ─ カーボン・クレジットに関する検討会資料(PDF)
東証市場の累計売買成立量など、日本国内の取引動向を確認できる参考資料です。
デジタルグリッド ─ RE Users Summit資料(PDF)
J-クレジット認定量の推移や価格例の整理が含まれており、国内需給を見る補助資料として有用です。
大和総研 ─ GX-ETS本格稼働とJ-クレジット需給レポート(PDF)
制度本格稼働と国内クレジット需給の関係を整理した実務向けの分析資料です。
J-クレジット制度 公式サイト
制度概要、方法論、プロジェクト情報など、日本の代表的なクレジット制度の基礎情報を確認できます。
