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原子力発電 / 再稼働 / 長期運転

既設原発の再稼働・長期運転市場
市場調査レポート

2040年度における電源構成で原子力2割程度が示される中、国内の原子力市場は 「新設中心」ではなく、まず既設炉の再稼働・長期運転・安全対策投資が主戦場です。 このページでは、再稼働の制度プロセス、長期施設管理計画、追加的安全対策費、必要設備容量の試算を軸に、 既設原発市場の構造を整理します。

2割程度
2040年度の原子力比率見通し
11基
国内の運転中原子炉
(NRA公表ベース)
22基
国内の停止中原子炉
(NRA公表ベース)
約2,662億円
追加的安全対策費の平均
(1基あたり)
市場の全体像

既設原発の再稼働・長期運転市場は、単なる発電設備市場ではなく、政策・規制・地域合意・設備更新・保守運用が 一体で動く制度駆動型の市場です。投資需要は、再稼働のための安全対策工事、高経年化対応、長期施設管理計画に基づく検査・補修、 さらに運転再開後のO&M高度化へと段階的に発生します。

① 再稼働前の安全対策投資

新規制基準適合に向けて、耐震、耐津波、電源・冷却、重大事故対策、特重施設などの追加工事が必要になります。 市場規模の中心はこの領域で、EPC、土木、機器、計装、配管、電源設備など多層の需要が発生します。

コスト検証資料では、2024年6月時点で審査申請中の16発電所27基について、 追加的安全対策費の平均が1基あたり約2,662億円と整理されています。

② 長期運転に伴う高経年化対応

長期運転市場では、劣化評価、非破壊検査、材料試験、コンクリート評価、部材更新、保全計画最適化が主な需要になります。 単発の工事ではなく、10年ごとの計画認可と点検の繰り返しが前提になるため、継続的な案件化が見込まれます。

とくに40年目の特別点検、60年目以降の追加点検は、長期運転市場の重要な節目です。

③ 運転再開後のO&M高度化

再稼働後は、設備利用率の改善、保守要員確保、調達最適化、予兆保全、工程短縮など、 運転保守の生産性向上が収益性を左右します。2040年に向けては、単に再稼働するだけでなく、 高い利用率を安定して維持できる運転体制が必要になります。

このため、市場は工事需要だけでなく、保守サービス、解析、デジタル化、標準化支援にも広がります。

2040年「原子力2割程度」に必要な設備容量の試算

2040年度見通しでは、発電電力量が1.1~1.2兆kWh程度、原子力比率が2割程度とされています。 これを原子力発電量に直すと概算で220~240TWh/年です。必要な純設備容量は設備利用率によって大きく変わります。 下表では、IAEA PRISの日本の純設備容量(運転中12.631GW、停止中19.048GW)と比較しています。

前提(設備利用率) 必要純設備容量
(220TWh/年の場合)
必要純設備容量
(240TWh/年の場合)
参考:日本の純設備容量
(運転中+停止中)
読み取り
70% 約35.9GW 約39.1GW 約31.7GW 既設炉の再稼働だけでは不足し得る水準。利用率低位なら供給余力は薄い。
80% 約31.4GW 約34.2GW 約31.7GW 既設炉の大半活用と安定運転が前提。余裕は大きくない。
85% 約29.5GW 約32.2GW 約31.7GW 既設設備の範囲でも視野に入るが、停止炉の相当部分の再稼働が必要。

示唆:市場の本質は「再稼働そのもの」ではなく「再稼働を成立させる周辺投資」

2040年に原子力2割程度を目指す政策シナリオは、単に再稼働件数を増やすだけでは成立しません。 必要なのは、審査対応、追加的安全対策、長期施設管理計画、高経年化対応、運転再開後の高利用率運営までを一体で回すことです。

したがって、投資機会は電力会社本体だけでなく、設備メーカー、建設会社、検査会社、材料評価、エンジニアリング、保守デジタル化まで広く分布します。

参考資料: 2040年度におけるエネルギー需給の見通し発電コスト検証に関するとりまとめ

制度・審査・長期運転の実務論点

再稼働市場では、規制適合の可否が設備投資の着工・回収時期を左右します。長期運転市場では、 「認可を一度取れば終わり」ではなく、10年ごとに高経年化評価と点検のアップデートが必要です。

再稼働・長期運転市場の流れ

再稼働案件は、申請から運転再開まで一直線ではありません。設計変更、工事、検査、対外説明が積み上がるプロジェクト型市場です。

ステップ1:新規制基準への申請・審査

原子力規制委員会への適合性審査申請から始まり、論点整理、補正、追加説明が継続します。案件ごとの差が最も大きく出る段階です。

ステップ2:追加的安全対策工事

審査進展と並行して、耐震・耐津波・電源・注水・計装・特重施設などの工事需要が発生します。もっとも金額が大きい投資局面です。

ステップ3:検査・確認・運転再開

設計及び工事計画、使用前確認、保安規定などの手続きを経て営業運転再開に至ります。ここでも工程遅延リスクは残ります。

ステップ4:高経年化対応・長期施設管理

再稼働後も10年ごとの計画認可、40年目の特別点検、60年目以降の追加点検が続き、検査・解析・補修の継続市場になります。

投資判断の要点

有望なのは「原子力そのもの」への抽象的な期待ではなく、号機別の工程確度 × 追加投資額 × 運転再開時期 × 長期運転余地で 評価できる案件です。制度の継続性が高い領域ほど、サプライチェーン側には比較的見通しの立てやすい需要が発生します。

 

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