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AT&Tの苦悩が見えるHBO Max

AT&Tの苦悩が見えるHBO Max

(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.193)
2020年6月20日

 

大手コンテンツ事業者の視聴者への直接配信(Direct-to-Consumer、以後D2Cと略)として、Walt DisneyのDisney+、それにComcast/NBCUniversalのPeacockに続き、AT&T/WarnerMediaのHBO Maxが開始した。AT&TもComcastと同様に多チャンネルサービスを持つが、状況は大きくと異なる。ComcastはケーブルTV加入者は失っているが、ブロードバンド加入者が増え、ケーブルTV加入者の1.5倍になっている。Comcastのフォーカスはすでにブロードバンドにある。Peacockにはリニアチャンネルもあり、多チャンネルサービスを脱退した人、あるいは考えている人を意識したサービス内容になっている。

 

AT&TはDirecTV買収でComcastを一時は抜き、一旦は最大の多チャンネルサービス事業者になった。しかし、AT&Tの多チャンネルサービス加入者はこの3年間で24%も減っており、2位に落ちている。加入者を失っているのは多チャンネルサービスだけでなく、ブロードバンドも3年間で11%の減少がある。

 

放送視聴者が減る中、AT&TもD2Cに乗り出さなければならないが、Comcastのように多チャンネルサービスの減収をブロードバンドで補うことは出来ないので、D2Cによる多チャンネルサービスへのカニバライゼーションを恐れている。

 

AT&Tには4つのHBOサービスがある。有料チャンネルのHBO、HBOチャンネル加入者向けのストリーミングサービスのHBO Go、HBOのSVOD版のHBO Now、そして新しいHBO Maxである。HBO MaxにはHBO Nowのコンテンツ以外に他のWarnerMediaのコンテンツ、それにスタジオジブリ、セサミーストリート等のライセンスしたコンテンツ等が加わっている。

 

カニバライゼーションを避けるために、HBO Nowの料金はHBOチャンネルの平均的な値段と同じ、$15である。HBO Maxも$15であり、Netflixの$13より高価である。3500万人の加入者があるHBOチャンネル加入者を減ららないために、HBOチャンネルへの加入者にはHBO Maxを無料で提供し、HBO Goはファーズアウトされる。さらに、AT&Tの多チャンネルサービス加入者にはHBOチャンネルとHBO Maxを無料にすることで、AT&Tの多チャンネルサービスの魅力を増やすつもりである。

 

本来はHBO Nowもフェーズアウトし、HBO Maxでリプレースするべきだが、ストリーミング・プレーヤでは1位と2位のRokuとAmazonとの契約が出来ず、これらの利用者はHBO Maxを使えないので、HBO Nowを無くすことが出来ない。

 

AT&Tは2025年までにHBO Max加入者を5000万人にする事を目標にしている。HBOチャンネルとHBO Nowの合計では4300万加入者があるので、700万人の新規加入者が必要になる。AT&Tの多チャンネルサービス加入者にHBO Maxを無料にすることでそれは容易なずである。しかし、HBOチャンネルの加入者は減っているので、それを補う必要がある。

 

HBO MaxをNetflixの$13以下にすれば良いのだが、それはHBOチャンネル、さらには多チャンネルサービスとのカニバライゼーションを起こすことになる。だが、それではHBO Maxから利益を出すことが出来ない。既存のHBOとHBO Nowの加入者にHBO Maxを無料で提供しても増収にはならない。逆に、同じ値段でコンテンツを増やすサービスを提供することで、利益は減る。同様にAT&Tの多チャンネルサービス加入者に無料でHBO Maxを提供しても収入は増えない。この問題をAT&Tはいかに解決するのであろうか。

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