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世界は、ARをVRよりも評価している

世界は、ARをVRよりも評価している

 

1. 序

IDCによると、AR(Augmented Reality:拡張現実)/VR(Virtual Reality:仮想現実) 関連市場 (ハードウエア・ソフトウエア・関連サービス合計)は、2018年で89億ドル (1兆円)、2019年で168.5億ドル (1.8兆円)、2023年には1606.5億ドル (17.3兆円)に達すると予想されている (下図参照)。

出典:IDC「Worldwide Semiannual Augmented and Virtual Reality Spending Guide 2018H2」

図1-1- 2023年までの世界AR/VR関連市場予測 (IDC予測)

 

IDCは、AR/VRを以下のように評価している。

-        VR

  • トレーニング・コラボレーション・デザイン・セールス・その他多数のユースケースを推進する方法
  • 着目する企業の数は勢いを増している

-        AR。

  • ハンズフリー技術を必要とする第一線の労働者に新しい能力をもたらす方法
  • 次世代機器・サービスの登場で、既存のビジネスプロセスを抜本的に変えるもの
  • タスクを容易にし、リソースへのアクセスを提供し、複雑な問題を解決することで、ビジネス分野でシェアを拡大

 

ところで、ARとは何であろうか?

改めて、この事を分析してみる。

 

2. ARアプリケーション紹介

ARとは「今見えている風景に何かを足す」技術であり、大きく分けると2種類の使われ方があります。

-        ビジョンベース:たとえば、日経新聞記事のマーカーにカメラを向けると詳細情報が表示、といったケース
(日経AR https://adweb.nikkei.co.jp/ar/lp/)

-        ロケーションベース:例えば、箱根町でアプリを起動すると実物大のエヴァンゲリオンが表示される、といったケース
(エヴァンゲリオンとAR(拡張現実)で観光促進、「箱根補完計画ARスタンプラリー」を体験してみた -観光ITレポート https://www.travelvoice.jp/20141204-32203 )

 

以下、AR技術のアプケーションを紹介する。

 

2.1. セカイカメラ

 

ARを広く世界に知らしめたアプリケーションは2016年7月リリースの「ポケモンGo」であるが、ここでは2009年公開の「セカイカメラ (開発・運営は頓智ドット社)」を取り上げる。

iPhone登場2年後、android端末登場1年後の2009年に公開されたアプケーションであり、あまりにも早すぎて (下図参照)、スマートフォン利用者自体が少なく (とはいえ、公開4日間で10万ダウンロードを記録)、かつGPS等の要素技術の完成度も低く、広く知られる事もなく、2014年にサービスを終了した。

 

図2-1- ロジャーズの普及理論とスマートフォン

 

 

セカイカメラは「場所」にフォーカスしたARアプリであり、任意の場所でアプリのカメラをかざすと、「エアタグ」という情報データを空間に表示する機能を持っていた。(下図参照)。

出典:日本発 ARの先駆者・セカイカメラはなぜサービスを終了したのか

図2-2- セカイカメラ画面

 

セカイカメラが「場所」にフォーカスしたARアプリであることを考えると、その動作は以下のようであったと推測できます。

出典:筆者作成

図2-3- セカイカメラ動作推測

 

因みに、セカイカメラでは以下要素技術が使われていたと推測できる。

-        データ登録時

  • GPS・ジャイロコンパズを使った位置情報のデジタル化 (緯度・経度・カメラ方向・角度)
  • 画像情報 (事物の切り取り)とタグ化

-        データ配信時

  • 位置情報の検索
  • パターン認識と検索
  • タグ情報の表示場所の調整

 

2.2. ARを用いたシミュレーション

 

次に紹介するARアプリケーションは、Ikeaが提供する家具シミュレーションである。このアプリは以下手順にて使用する。

1)     Ikea Placeをスマフォにインストールする

2)     家具を置きたい場所をスマフォカメラで映す

3)     置きたい家具を、ウェブカタログから選択する

4)     スマフォ画面に家具が表示される。(下図参照)

https://www.youtube.com/watch?v=UudV1VdFtuQ 出典:YouTube動画

図2-4- ARアプリを使った家具設置シミュレーション

 

いかがでしょうか。

商品カタログも、紙媒体で提供する、あるいはタブレット/電子媒体で提供する時代ではなく、実際の部屋のレイアウトにARでマッピングして、消費者に購入を促進する時代になっているのである。

 

2.3. ARを用いた作業支援 (2013年頃)

 

次はSAP社とVuzix社が開発したARを用いた作業支援システムを紹介する。

 

https://www.youtube.com/watch?v=wa9mJL-ShBE 出典:YouTube動画

図2-5- スマートグラスで工場労働者にハンドフリーのイノベーションを

 

動画に表れる機器はスマートグラス (Vuzix社製)であるが、実際には、様々なサーバと連携していると推測できる。

-        作業計画・指示システム

-        作業者位置関係管理 (フォークリフト衝突回避等)

-        在庫管理システムと (ピックアップする製品の保管場所管理)

-        バックオフィスサポート部門 (不測の事態発生時の会話による支援)

-        就業時間の管理

 

これらの作業の為、このスマートグラスには以下機能が実装されていると推測できる。

-        データ通信機能 (サーバとの通信機能)

-        進路表示・ラック表示機能

-        バーコード・QRコードリーダー

-        屋内位置特定用発信機・アンテナ

-        文字認識機能 (柱番号特定)

-        音声発声機能 (作業指示や警告を音声で伝達)

-        テレビ会議機能 (バックオフィスサポートとの会話)

 

既に2013年には、これだけのシステムが商品化されていた。

 

2.4. ARを用いた作業支援 (2019年頃)

 

次は、Microsoft社のHoloLensを用いたARアプリケーションを紹介する。

 

https://www.youtube.com/watch?v=M3_iR0ig0Zo 出典:YouTube動画

図2-6- Microsoft HoloLens を活用した整備士の働き方改革

 

HoloLensを自動車の保守・修理作業に使う事で、トヨタは、単に作業マニュアルの電子化というだけでなく、必要な情報を自動車にマッピングすることで直感的にわかりやすし、作業の標準化を実現し、結果的に、作業時間の短縮 (=自動車オーナを待たせる時間の短縮=サービス向上)にもつなげる事ができた。

 

動画に表れる機器はHoloLensであるが、実際には、様々なサーバと連携していると推測できる。

-        設計情報システム

-        保守・修理作業マニュアル

 

そして、ここでは、少なくとも以下の要素技術が使われている

-        ジェスチャコントロール

-        視線トラッキング

-        画像認識

 

 

3. AR技術の今後

 

AR技術は、現実に情報を付加することで人間の判断・行動を支援するツールである。

今は、視覚で捉えた現実に関連する情報の表示であるが、いずれは、様々なIoTデバイスを併用することで、聴覚・嗅覚・味覚・触覚で捉えた現実に関する情報の表示も行うようになるのではないだろうか。

例えば、目の前にあるワインを香り成分・味覚成分等をセンサーで分析して「ボルドーワイン。2000年産。当たり年のワインです。」とARデバイスで表示される。

あるいは、工場では、音や振動、熱放射の中に異常を検出した時、作業員を避難させるといった使い方もありうる。

 

そのように考えると、ARはプライベート・ビジネスの双方で24時間・1週間・365日、いつでも活躍場所がある技術とも言える。

一方、VRは没入感を要することもあり、閉鎖空間で使う技術であり、24時間使える技術とは言えない。

このような違いが、AR/VRと一括りにされつつも、冒頭の市場予測で示したように、AR技術が市場の過半を占めるとIDCが予想する原因なのであろう。。

 

4. AR/VR技術の利活用と日本

 

IDCは、AR/VRのマーケットドライバーを以下のように予想している

-        消費者市場:VRゲーム・VRビデオ/機能表示・ARゲーム

-        ビジネス市場:トレーニング・産業メンテナンス・小売/展示

 

又、IDCのシニアマーケットアナリストである菅原啓氏は

-        世界では法人部門でのAR/VRの活用が大きく伸びるとみられる

-        日本では法人部門の伸びが小さいため全体の伸びも小幅にとどまる。日本の法人部門はやや保守的で、一般に新技術の業務活用に対する抵抗感が強い。

 

この二つのコメントと、世界全体では市場の過半をARが占めるが日本ではVRが圧倒的という市場構造の違いを合わせて考えると、日本では、(消費者が)VRゲーム/VRビデオを受入れるが、(ビジネスは)ARを用いた業務革新・ビジネス革新を受け入れない、という事のようである。

 

日本のITベンダーは、海外市場の開拓と共に、国内企業の啓蒙に務めてもらいたい。

又、日本の国内企業も先取の精神をもって、新技術 (もはや、新技術とは言えないのだが)の導入に務めてもらいたい。

iPhoneが発売された2年後の2009年にARアプリを世界で公開したのは、日本企業なのである。

 

 

筆者:株式会社データリソース客員研究員 鈴木浩之 (ICTラボラトリー代表)

 

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