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孫社長、トランプ大統領とタッグを組んで全米No.1を掴むのか

孫社長、トランプ大統領とタッグを組んで全米No.1を掴むのか

 

1. 序

昨年12月、孫社長は、大統領選に勝利したトランプ氏をいち早く訪問して「500億ドルの投資と5万人の雇用創出」を約束した。マスコミは、これをT-Mobile買収への再挑戦への布石と理解している。

トランプ氏は大統領に就任するや、FCC委員長に市場競争重視のアジット・パイ氏を任命し、米国の通信行政をオバマ時代とは一線を画そうとしている。2014年にソフトバンクが試みたT-Mobile買収はFCCの反対で成立しなかった案件であるが、今回は状況がまったく異なる。

そこへ、ロイター紙が「ソフトバンクがSprintのT-Mobileへの売却を検討中」というニュースを、2月17日に報道した。

さて、今回はどうなるであろうか。それを予測する。

 

2. これまでの経緯

まずは、今日に至るまでの出来事、特に、今後を予測する上で考慮すべき出来事を時系列でピックアップする。

時系列で見ると、ソフトバンクは、Sprintを買収し収益を改善させつつも、不発に終わったT-Mobile買収も含め、いくつかの買収・出資を施していることも分かる。

表1- SprintとT-Mobileの今後を予測する上で考慮すべき出来事

年月

出来事

2012年

10月

ソフトバンク、Sprint買収を発表。買収額は201億ドル

12月

Sprint、2.5GHz帯周波数を持つCleawire買収を発表

2013年

7月

ソフトバンク、Sprint買収を完了 (Clearwireも含む)

10月

ソフトバンク、ブライトスター(売上高ベースで世界最大手携帯端末卸売企業)を買収。買収額は12.6億ドル。

2014年

8月

ソフトバンク、T-Mobile買収を断念。理由は司法省とFCCがAT&T、Verizon、Sprint、T-Mobile間での合併は承認不可とした事

2015年

9月

Sprint、600MHz帯オークション不参加を表明

2016年

6月

FCC、600MHz帯オークション用に126MHz・864億ドル相当を確保と発表

7月

600MHz帯オークション開始。入札はAT&T、Verizon、T-Mobile、Dish Network、Comcast等の事業者及びVC (最終的には62社)

9月

ソフトバンク、ARM買収を完了

11月

ドナルド・トランプ氏、米国第45代大統領に選出

12月

孫社長、トランプ次期大統領と会談し米国での500億ドルの投資と5万人の雇用創出を約束

2017年

1月

ドナルド・トランプ氏、アメリカ合衆国第45代大統領に就任

1月

トランプ大統領、市場競争を重視するアジット・パイ氏をFCC委員長に任命

2月

孫社長、4半期決算発表会でSprintの現状を報告 

- 加入者は2015年に続き純増

- 過去3年間連続減少した売上高が2016年は拡大 (前年比:+3%)

- 営業利益も2015年に続き黒字でかつ拡大 (前年比 4.3倍)

2月

孫社長、4半期決算発表会でT-Mobile買収の再挑戦の可能性を示唆

2月

ロイター紙、ソフトバンクがT-MobileへのSprint売却を検討と報道
今後の予想

2017年

4月

600MHz帯オークション終了を待って、ソフトバンクとT-MobileがSprintとT-Mobileの今後を交渉開始 (ロイター紙予測)

 

 

3. 何がこれから起きるのか

Q1) SprintとT-Mobileの合併はありうるか

以下に2016年3Q現在の米国の主要携帯事業者の指標をまとめる。

トップグループはVerizonとAT&Tであり、第二グループにT-MobileとSprintがいるが加入者数はトップグループの半分程度となり、5位となると加入者数は更にその10分の1になる。

表2- 携帯通信事業者トップ5 指標 (2016年3Q現在)

この図から考えると、いずれ、米国携帯通信市場はVerizonとAT&Tの二社寡占市場になると予想される。SprintとT-Mobileを合併させると、規模的には2社と拮抗することになり、米国携帯通信市場は3社体制となる可能性が出てくる。

その意味では、SprintとT-Mobileの合併はありうる。

問題は、Sprint、T-Mobile共に米国資本ではないことである。「America First」のトランプ大統領は外国資本が通信インフラの主要な一角になる事を認めるか?

認めない可能性もある。

又、分離していれば出資者が二カ国になるのに、合併すると出資者が一カ国になり、流入額が減る事にもあり、その意味でも「America First」のトランプ大統領は認めないかもしれない。

ここでもう一つ注目すべき点は、Comcast等のケーブル会社やDISH Network等の大規模事業者が今回の600MHz帯オークションに参加し、携帯通信事業に参入しつつあるということである。

FCCには、SprintやT-Mobileに対してケーブル会社やDISHとの連携を促し、それぞれをVerizon・AT&Tへの対抗馬としていく方策を採る可能性もある。

この場合、米国携帯通信サービス市場は、Verizon、AT&T、Sprint+X、T-Mobile+Y、Z1、 Z2・・(独自路線を選択したケーブル会社)が存在する競争環境のある市場となる。

市場競争を重視するアジット・パイ氏はこちらを好ましいと考える可能性もある。

しかも、この時にはSprintの通信インフラ拡充では日本)ソフトバンクの資金を、T-Mobileの通信インフラ拡充ではドイツ)ドイツテレコムの資金でアテにできるので、インフラ投資を進める「America First」のトランプ大統領にしても、一石二鳥のメリットがある。

このように考えると、SprintとT-Mobileの合併の確率は高くないと思われる。

Q2) 孫社長のトランプ氏への約束は何だったのか?

以下に2016年12月期のソフトバンクの売上げ構成を示す。もし、Sprintを売却すれば、ソフトバンクは売上額で40%、営業利益額で15%の縮小になる。これまでに投下した資本の事も考慮すれば、売却に踏み切るには相当のメリットが必要であろう。

出典: 2017年3月期 第三四半期決算報告会資料

図1- ソフトバンク社売上げ

では、どうするか?

まず、SprintにはFCCの承認も得つつケーブル会社と提携をさせる。

次に、ARMを使ったIoTデバイス、特に個人向けデバイスとスマートホーム向けデバイスの開発を米国で行う。しかも、AmazonやGoogleが行っているように、ARM-baseのIoTデバイスの開発を支援するファンドを用意する。既にトランプ大統領には「500億ドル・5万人雇用創出」と約束している訳だから、原資はある。

個人向けデバイスはブライトスター経由で個人に販売し、スマートホーム向けデバイスはケーブル会社経由で家庭に売り込む。

同時に、Sprintは2.5GHz帯を使った5G携帯網を構築し、IoTデバイスからのトラフィックを収容していく。IoTデバイスで回線需要を巻き取ることに先行すれば、Sprintが回線数でVerizonやAT&Tに追い付き、追い越す事も可能である。

しかも、これらは、いわば、孫社長がトランプ大統領のお墨付きを得ている行動になるわけだから、米国内での行動の自由も大きい。

Verizon・AT&Tがソフトバンクの照準に入る日も意外と近いかもしれない。

あくまでも、これは今のソフトバンクが持つリソースから考えての推測である。

ソフトバンクは多くのプランを考えているであろうが、こういったプランの積み重ねを踏まえての「500億ドル・5万人雇用創出」という約束になっていると思われる。

 

4. 終りに

「SprintのT-Mobileへの売却をソフトバンクが検討中」というニュースを起点としての考察であったが、筆者の予測は、その間逆となった。

実際はどうなるのであろうか?

ただ考えるに、携帯通信だけに限定しての再編論議にどれだけの意味があるのであろうか。

今や携帯端末があれば、音声通話・インターネットアクセスサービスに加えて動画閲覧サービスも利用可能である。サービス市場は融合しているのである。業界再編はこの融合されたサービス市場をベースに進むのではないだろうか。

この融合市場に、Sprintインフラ、ARM Chip、携帯端末流通業、500億ドル、5万人の雇用創出を携えて、多彩な企業を陣営に引き込みつつ、挑戦をしていくことになる。

600MHz帯オークションが終了し交渉に関する制約が解除され、各社が動き始めた時、ソフトバンクのこれまでの種まき・撒き餌の成果が見えてくる。

その動きを注目していきたい。

 

 

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筆者:株式会社データリソース客員研究員 鈴木浩之 (ICTラボラトリー代表)

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