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中国通信機器ベンダの動きと5G携帯への取組み

中国通信機器ベンダの動きと5G携帯への取組み

1. はじめに

以下にITU-R5G携帯標準化における各国の提案数を示す。今や、提案数でみると、中国が日本を抜きトップになっている。既にHuawei・ZTEが世界的な携帯インフラ機器ベンダになっているが、標準化活動においても中国は日本・欧米と並びたつ存在となっている。
今回は中国の5G携帯への取組みを考察し、2017年以降の日本ベンダを展望する。

出典:ITU-R

2. 中国の携帯通信業者の状況

中国は携帯通信の人口普及率は2015年で94.5%に達するほど、携帯通信サービスは普及している。世代別の比率は、2Gが48%、3Gが35%、LTEが17%となっている。まだ、電話サービスが中心であると言える。
ただ、固定インターネットの普及率は48%程度であるが、モバイルインターネットは89%が利用している。従って、携帯通信の利用形態が電話サービスからモバイルブロードバンドに移行してきている。

出典:GSMA

世界の携帯通信事業者の回線数を順位づけると、中国のChina Mobileが8億加入と世界1位、携帯事業売上高でみても世界1位である。また、China Unicom、China Telecomも10位以内に入っている。中国は携帯通信機器ベンダにとって最重要市場であると言える。

 

出典:GSMA

今後、中国の通信事業者の加入者数の増加は鈍化するが、世界1位の加入者数はしばらく続くと想定する。加入者の端末としては、スマートフォンの普及率が70%を超え、4Gから5Gへの進化も市場から強まっている。

3. 中国通信機器ベンダの世界戦略

3.1. 中国通信機器ベンダの中国での動き

1990年代、中国は携帯通信の標準化が進む中で、3GPPおよび3GPP2 の標準に準拠した方式を採用した (GSM、CDMA2000の両方式)。中国の携帯事業者は、欧米ベンダと中国ベンダを選定し、両グループにより両方式のネットワークを整備してきた。また、中国通信事業者は、欧州ベンダのマネージドサービスを採用し、携帯ネットワークの構築とロールアウトを行い、欧州ベンダのネットワーク構築ノウハウを勉強した。同時に、中国の携帯通信機器ベンダも携帯通信事業者のリードに従って、ネットワーク構築のノウハウを学んできた。
3Gネットワークにおいて、中国ベンダは2Gでの経験により独自で開発に動きだしたのである。
今や、3G,4G 世代では、携帯通信ネットワークを独自開発し、その開発した製品群を中国国内に留まらずに世界市場に展開した。ただ、大手中国ベンダのHuaweiとZTEの戦略は異なる。

3.2. Huawei

Huaweiは、2G当時は中国国内市場が中心であったが、3Gd世代以降に国内市場に留まらずに他地域の携帯ネットワークビジネスを推進してきた。2013,2014年では中国以外に、欧州、アフリカ、アジア地域を中心に他地域のビジネスが60%を超えるまでになった。ただ、アメリカは、アメリカ政府が中国企業の通信ネットワークの参入を許可していないため、参入できていない。

出典:Huawei IR report

売上に占める通信事業者向けネットワークは70%弱であり、ビジネスの中心は通信事業者向けのネットワークである。

出典:Huawei IR report

3.3. ZTE

ZTEはHuaweiと同様に、3G 以降は中国だけに留まらず、他地域へビジネス展開を行っている。ZTEの場合は、中国市場からの売上がHuaweiよりもまだ大きく、50%程度が中国市場からの売上である。また、ZTEはアフリカの売上比率が高い点である。背景として、ZTEは中国のアフリカへの支援に寄り添い、アフリカ各国の携帯通信ネットワークのビジネスを意欲的に獲得している。

出典:ZTE IR report

ZTEの売上構成は通信事業者向けネットワークが50%程度で携帯端末の売上が35%あり、Huaweiとは異なっている。

出典:ZTE IR report

4. 中国ベンダの多地域での動き

Huawei、ZTEは標準化されたネットワーク機器の価格競争力でビジネスを展開してきた。中国ベンダと競合にある欧州ベンダは、2010年頃から、東欧、アジア、北アフリカ、南米の通信事業者に向けマネージドサービスの展開を始めた。欧州ベンダと中国ベンダの戦略の差は、サービスにある。

データ参照:平成25年情報通信白書

マネージドサービスを採用した通信事業者は価格優位性よりも、運用コストの削減を重要視した。その上、マネージドサービスの契約期間は5年~10年程度が多く、この期間中に携帯通信の3GからLTEへの世代交代のタイミングも入っている。この欧州ベンダの戦略により、Huawei、ZTEは、東欧、アジアの通信事業者のLTEへの展開で通信事業者の選定から外れるケースが増えてきた。
ただ、中国ベンダは、東欧、アフリカやアジアの新興国へ2G、3G ネットワークを販売するビジネスを中国の国家支援を背景に行っている。従って欧州ベンダと中国ベンダは新興国で、激しい競争を行っている。
中国ベンダがネットワーク機器の価格優位性を武器にしている一方で、欧州ベンダはマネージドサービスの比率が多い。このビジネススタイルの差はこれから始まる5Gでの競争でも続くと想定できる。

5. 中国の5Gへの動き

IMT-2020 (5G)推進グループ(www.imt-2020.cn)は、中国の政府機関と主要通信事業者および主要ベンダ、大学を組織化し、携帯通信の要素技術の開発を産学官で推進する団体である。この団体が中国では5G開発をリードしている。
IMT2020推進グループのリードに従って、通信事業者も5Gに対しては積極的で、China Mobileが2020年の商用化に向けてトライアルを2018年から開始する。中国ベンダもChina Mobileをサポートしている

出典:GSMA

また、中国は5Gにおいて標準化にも積極的に関与し始めている。
下記はITU-Rの中で5Gの標準化を行っているSG5WP5Dにおける各国の提案件数である (再掲)。2012年~2015年は5Gへの活動が本格化した時期でもある。
この期間の中国の提案件数は日本を抜いてNo1である。このグラフからもわかるように中国は標準化おいても積極的活動に動いている。

出典:ITU-R

中国ベンダは、Huawei・ZTEも含めて、中国政府の5Gの取り組みをフォローして研究開発に積極的に動いている。そして、HuaweiはNTTドコモの5G開発グループにも入りするなど、中国国外でも5Gのトライアルに参加している。ZTEもMWCで韓国KTと共同でMassiveMIMOの展示を行い連携している。
中国ベンダは5Gでも世界戦略に積極的に動いている。

6. 日本の通信産業界の対応すべき課題

今や、世界の全方位的な通信機器ベンダは欧州2社と中国勢2社の寡占化状態になっている。一方、ルータなどの要素機器の通信機器ベンダの戦略は、あえて全方位的なビジネスに出ずに、4社のエコシステムの中に入る選択をしている。理由は、全方位的な通信機器ベンダは営業利益率が悪化するからである。
全方位的な通信機器ベンダは、サービスネットワーク、サポートネットワーク、プロフェッショナルスタッフを世界展開する必要がある。従って、世界をカバーするサポート体制と全方位の知見をR&Dが持つことが求められる。その結果、人件費や拠点のコストの出費が多くなり、営業利益率が下がってきている。10年前は、全方位的通信ベンダは10社前後あったが、合併・買収等で、現在の4社まで減った。つまり、世界の通信ネットワーク市場は大きく変化したのである。
日本の通信ネットワーク機器ベンダは、世界市場の変化を十分理解しており、日本国内では全方位的な通信機器ベンダとして活動しても、世界では、要素機器の通信機器ベンダの地位を追及している。

7. 提言

中国は、国を挙げて中国の通信機器ベンダが世界市場にビジネス拡大をすることをコミットしている。中国の通信事業者も中国政府の産業政策をフォローし、中国通信機器ベンダの世界市場への展開を支援した。
結果として、世界市場で大きなシェアを取れるところまで成長できたと言える。20年前には日本の通信ネットワーク機器ベンダも世界市場に打って出たが、全方位的な通信機器ベンダには成れなかった。
現状では、再度、日本の通信機器ベンダが世界の全方位的な通信機器ベンダに挑むことは得策ではない。日本の通信機器ベンダとその背後に居る要素技術ベンダは自社の強みを精査し、現状の世界の通信市場で成長できる事業戦略に動くべきである。
日本の通信関連企業が衰退したと見る論調は多くあるが、日本の通信機器ベンダの営業利益率は堅調に推移している点を多くの関係者は知るべきである。
これからも携帯通信ネットワークの世界市場は大きく変化していくだろう。中国の通信ネットワーク機器ベンダも今まで戦略を維持することは難しいと思われる。
日本の通信関連ビジネスに関わっている企業は中国の通信機器ベンダの戦略を精査し、自社の事業戦略を柔軟に変化させることを提言する。

最後に

中国を含む海外の通信ネットワーク機器ベンダの戦略について深堀調査を考えている場合には、是非、データリソース社にご連絡をいただければ思います。

https://www.dri.co.jp/contact/inquiry.php

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筆者:株式会社データリソース客員研究員 鈴木浩之 (ICTラボラトリー代表)

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