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欧米では電力供給サービスの自由化・規制緩和がかねてより進んでいたが、いよいよ、日本でも、再生可能エネルギー発電の進展、2016年の小売自由化を前にして、様々な動きが見えてきた。
今回は、通信サービス自由化の軌跡を見つつ、電力供給サービス自由化がもたらすビジネスチャンスと課題を考えていきたい。
1985年、通信サービスが自由化され、多くの企業が通信サービスに参入した。当時の競争は、当初は長距離通話の料金値下げ、その後、市内通話の値下げという今から考えると単純なものであった。
90年代、ブロードバンドインターネットや携帯電話が一般に普及し始めた頃から、競争の様相が変わり始めた。
インターネット/携帯電話は、通信自由化とは関係ないと考える方も多いだろう。
自由化とは、「民間企業がサービスを提供できる」という事でもあるが、自由化には「サービス提供の可否を決めるのも、提供スピードを決めるのも市場 (提供者業・消費者)である。」という側面がある。
もし、通信サービスが公社事業であったら、通信サービスのここまでに急速な普及・発展はなかったであろう。
電力供給自由化がもたらす変化においても、この事は強調しすぎてもしすぎることはないと考えられる。
とはいえ、2000年7月に内閣内にIT戦略本部が設立され、それが日本のブロードバンドサービス普及に大きな役割を演じていたことを考えると、政府の役割・リーダシップも大きな役割を演じていたと考えられる。電力産業の自由化においても、政府のリーダシップが期待される。
そして、00年頃の通信バブルを経て、通信インフラが一定の成熟度に達した時、通信産業はウェブテクノロジーを介してコンピュータ産業と融合し、ICT産業への変身した。
ICT産業とともに活性化しはじめたのが、ニュースサイト・eコマースであり、ネット広告、EMS/ODMといった生産システムである。
これらの新サービスが、宅配業・音楽配信・セキュリティソフト等の業界を潤わせ、新興国の発展を促している。
その影で、小売業/実店舗、書籍・音楽・映画販売業、広告業等が行き詰まりを見せ、ワールドワイドなサプライチェーン構築に出遅れた日本のIT産業/家電産業も、同様に行き詰まりを見せている。
そして、今、ICT産業は、B2C/C2Cの世界ではO2Oやドローン・オムニチャンネルで現実世界と融合し、B2Bの世界ではM2M/IoT・インダストリアルインターネット・スマートXをキーにして新たなプラットフォームが構築し始めている。通信産業は、自分自身も変化発展させつつ、産業分類・体系の変革をリードしている。
通信サービス市場は、通信事業者の一挙一投足に左右されるものでも、ICTベンダーの一挙一投足に左右されるものでもなくなっている。
又、この過程において、かつては通信機器投資といえば通信事業者による公衆網向けが大半を占めていたが、今や、通信事業者による投資は40%程度に後退した。
もはや、通信機器市場も、通信事業者の一挙一動に左右されるものではなくなっている。

日本の通信業界は来年、自由化30年を迎える。電電公社がNTTになった1985年に予想されていた2015年は、今とはまったく違う世界であったに違いない。
さて、電力業界は、今後、どのような軌跡をたどるのであろうか?私は以下のように考えている。
2015年~2025年:機器ビジネスの時代
2020年~2030年:新ビジネスモデルの台頭と、既存ビジネスモデルの停滞
2035年~:次なるビジネスモデルの時代
何ゆえ、機器ビジネスの時代と考えるか。その理由を以下にリストアップしていく
1) 現在の送配電網は以下にあるように、比較的単純なツリー構造である。今後、電力自由化において、この既存電力会社送配電網が新規参入事業者にも提供されることになり、この送配電網が下図のように変化していく。送配電網をこのような形に改造していくためには、莫大な投資が発生すると予想される。

2020年の送配電網 (当社予想)
2) 日本全体での電力運用を行う広域送電網が構築される、そのための広域系統運用機関も2015年に発足する。
3) 2014年9月現在、登録済み電力事業者は350社以上。これらの企業が何らかの投資を行うことになる。
4) 不動産事業者/デベロッパがエネルギー事業者となりMEMS・CEMSを提案。電力会社スマートメータ/検針計の外側で電力供給設備の投資が行われると見込まれる

5) 家電メーカ・住宅メーカ・自動車メーカ等がHEMSを提案。一般家庭による屋内電力管理への出費が見込まれる。

6) 欧米の先行事例を参考しての仮想発電所 (VPP)・電力ブローカ等の新しいビジネスが始まる。
通信自由化後に起きた事の類推から、以上のような事が予想できる。そして、同様の理由により、これらの流れも一本道には進まない。様々な紆余曲折・試行錯誤が見込まれる。
民営化後のNTTは競争環境の育成・維持という命題のもと、ネットワーク開放・イコールアクセス・ドミナント規制といった様々な制約を課されたし、30年経った現在も課されている。
同様の制約を一般電気事業者に課すことが、今後、議論になるであろう。
通信行政においては米国・イギリス等の先行事例を調査しつつ、日本のその時々の状況に合致する規制が考え出され、実施されてきた。
電力産業 (電力事業者、機器ベンダー)においても、通信同様のアプローチが行われると考えられる。
機器ビジネスの時代とはいえ、通信機器市場においても、主役は通信事業者向け機器ベンダーから企業網向け機器ベンダーにシフトした。エコシステムの変化とともに主役は変わっている。
この例から類推すると、xEMS市場の取り込みが機器ベンダーの命運を握っていると思われる。
機器メーカは米国・EUの先行事例も参考にしつつ、これまでと一段上のビジネススタイルも模索すべきであろう。
外資機器ベンダーにとっては、新規参入電力事業者・民間部門はビジネスチャンスである。
通信事業においても、従来機器ベンダーはNTTをしっかりと押さえているが、KDDI/ソフトバンクを押さえず、かつ民間部門も押させていない。KDDI/ソフトバンクの台頭・民需部門の拡大により、投資主体も変化し、日本市場のトップシェアを外資機器ベンダーが確保という事態も、多々起きている。
電力自由化では米国・EUが先行しているだけに、米欧ベンダーは日本を大きなビジネスチャンスと見ているはずである。
日本の重電機器メーカも国際競争力確保という視点から事業の再編・統合を進めているが、足元の強化も必要と思われる。
インターネット普及につれ、eコマース企業・グローバルサプライチェーンを持った企業・オンラインコンテンツ事業者がプレゼンスを獲得した。それに伴い、物流ビジネスが発達した。
送配電網が双方向性・再生可能エネルギー対応・電力卸市場対応を完成させた時、日本でVPP/電力アグリゲータといったビジネスの環境が整ったことになる。
一方、欧米では、これを更に発展させたビジネス、飛躍/トランスフォームさせたビジネスが出てくると思われる。
日本は周回遅れである。
とはいえ後発のメリットを生かして、米欧の進展を丁寧に観察し、最適解を構築し、先頭グループに入るべく精進していくべきであろう。
通信産業が今日を迎えたのには、インターネット・携帯電話という巨大な起爆剤とIT戦略本部のリーダシップがあった。
電力産業における起爆剤は何であろうか?
地球温暖化ガス排出量削減は今後50年・100年の課題である。現在、発電所は主要排出源の一つであるが、発電設備を地球温暖化ガスの排出がないゼロエミッション方式に切り替え、かつ、冷暖房設備・自動車等を石油ベースから電気ベースへの切り替えを進めていくならば、一つの起爆剤といえる。
しかし、インターネット・携帯電話に相当する大きな起爆剤とはいえない。
まだまだ夢の世界の域を出ないが、宇宙開発は大きな起爆剤となりうると考えている。
たとえば、宇宙基地・宇宙船はxEMS/マイクログリッドの発展形とゼロエミッションの統合であり、太陽光発電・無線送電技術は宇宙太陽光発電の要素技術である。
原子力発電・核融合発電も、宇宙開発を大きな起爆剤として発展する可能性がある。
通信エコシステムの進歩・変革が30年後に「サイバースペース」を生みだしたように、電力エコシステムの進歩・変革が「宇宙時代」をいずれ (2050年?)、生み出すのではと考えているところである。
バブルは大きな傷跡を通信産業に残したが、一方では、ヒト(才能)・カネ・モノ (技術・設備)が集まり、本来ならば10年かかって起きる事象であるインフラ成熟を3年で実現させ、次の時代を引き寄せた
バブルの陽の側面を活用し、このチキンレースを勝ち抜くスキルも、日本企業は問われている。
当社としても、そのエネルギーの起爆剤を探しつつ、電力革命の力学・潮目の変化を適宜報告し日本企業がこのチキンレースを勝ち抜くことを支援していきたい。
欧米を始めとして、BRICS等の新興国についても、電力の法規制等の調査が必要な場合は、当社にご相談ください。
データリソース社は、当社の豊富な経験・実績に加え、海外100社以上の厳選された市場調査会社との提携のとも、電力事業の現状と動向 (法規制・要素技術・システム技術・主要プレイヤ等)、多くの情報を持っております。
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筆者:株式会社データリソース客員研究員 鈴木浩之 (株式会社ICTラボラトリー代表取締役)